バロック美術を代表する巨匠、ペーテル・パウル・ルーベンスは、スペイン領ネーデルラントのアントウェルペン、現在のベルギーにて育った画家だ。幼いころから古代文化に親しみ、イタリアに憧れを抱いていたルーベンスは、イタリアに8年滞在中に古代美術やルネサンスの美術を咀嚼し、当時の最先端の美術を身につけた。アントウェルペンに戻ってからは宮廷画家として活動。光と動きにあふれるその作品は、同時代から後世にいたるまでヨーロッパの画家たちに多大な影響をおよぼした。
そんなルーベンスとイタリア美術の関係に焦点を当てた展覧会「ルーベンス展―バロックの誕生」が、2018年10月16日から東京・上野の国立西洋美術館にて開催される。それに先がけ、3月29日にベルギー王国大使館にて記者発表会が開かれた。
これまで開催されてきたルーベンス展やルーベンスの先行研究では、ネーデルラント美術との関連に焦点を当てるものばかりだったという。しかしこの展覧会は、ルーベンスがいかにイタリア文化(古典)を継承し、バロック美術の誕生と発展に寄与したのかを検証するという、これまでにない内容だ。
記者発表会に登壇したギュンテル・スレーワーゲン駐日ベルギー王国大使は「ユニークで素晴らしい展覧会。日本だけではなく世界でも開催してほしい」と期待を述べ、ジョルジョ・スタラーチェ駐日イタリア大使は「ルーベンスがイタリアでインスピレーションを受けたということを誇りに思う」と語った。
また、展覧会の監修を務める国立西洋美術館主任研究員の渡辺晋輔が、全7章ある展覧会の構成について説明。章タイトルはまだ仮としながらも、第1章「ルーベンスによる古代美術とイタリア美術の学習」第2章「英雄としての聖人たち:宗教画とバロック」第3章「肖像画」第4章「ルーベンスの筆さばき:速筆が画面にもたらす活力」第5章「ヘラクレスと男性ヌード」第6章「ヴィーナスと女性ヌード」第7章「神話の叙述」と、充実の内容がうかがえる。
この7章を経てルーベンスとイタリアの双方向の影響関係を検証する、過去最大規模のルーベンス展となるという。
また、「ルーベンス展」会期中は西洋美術館のロビーにて、4Kカメラで撮影したアントウェルペン聖母大聖堂の《キリスト昇架》《キリスト降臨》《聖母被昇天》を原寸大に近い大きさで再現することも発表された。これはテレビアニメ『フランダースの犬』のラストシーンで登場する作品として日本でもよく知られている作品だ。
本展覧会ではルーベンスの作品は45点(帰属・工房作等含む)、その他の作品を合わせて約75点が展示予定だという。これまでにない規模と内容が予定されている「ルーベンス展」。半年後の開催を楽しみに待ちたい。