2018.3.29

「王の画家にして画家の王」
国内過去最大規模の
「ルーベンス展」その内容とは

バロックと呼ばれる壮麗華美な美術様式が栄えた17世紀ヨーロッパを代表する画家、ルーベンス。同時代の画家だけではなく後世にも多大な影響を及ぼした巨匠の展覧会が、2018年10月16日から東京・上野の国立西洋美術館にて開催される。開催に先がけて3月29日に開かれた記者発表会にて、その詳細が明らかになった。

「ルーベンス展―バロックの誕生」記者発表会 2018年3月29日撮影
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 バロック美術を代表する巨匠、ペーテル・パウル・ルーベンスは、スペイン領ネーデルラントのアントウェルペン、現在のベルギーにて育った画家だ。幼いころから古代文化に親しみ、イタリアに憧れを抱いていたルーベンスは、イタリアに8年滞在中に古代美術やルネサンスの美術を咀嚼し、当時の最先端の美術を身につけた。アントウェルペンに戻ってからは宮廷画家として活動。光と動きにあふれるその作品は、同時代から後世にいたるまでヨーロッパの画家たちに多大な影響をおよぼした。

 そんなルーベンスとイタリア美術の関係に焦点を当てた展覧会「ルーベンス展―バロックの誕生」が、2018年10月16日から東京・上野の国立西洋美術館にて開催される。それに先がけ、3月29日にベルギー王国大使館にて記者発表会が開かれた。

 これまで開催されてきたルーベンス展やルーベンスの先行研究では、ネーデルラント美術との関連に焦点を当てるものばかりだったという。しかしこの展覧会は、ルーベンスがいかにイタリア文化(古典)を継承し、バロック美術の誕生と発展に寄与したのかを検証するという、これまでにない内容だ。

 記者発表会に登壇したギュンテル・スレーワーゲン駐日ベルギー王国大使は「ユニークで素晴らしい展覧会。日本だけではなく世界でも開催してほしい」と期待を述べ、ジョルジョ・スタラーチェ駐日イタリア大使は「ルーベンスがイタリアでインスピレーションを受けたということを誇りに思う」と語った。

「ルーベンス展―バロックの誕生」記者発表会 2018年3月29日撮影

 また、展覧会の監修を務める国立西洋美術館主任研究員の渡辺晋輔が、全7章ある展覧会の構成について説明。章タイトルはまだ仮としながらも、第1章「ルーベンスによる古代美術とイタリア美術の学習」第2章「英雄としての聖人たち:宗教画とバロック」第3章「肖像画」第4章「ルーベンスの筆さばき:速筆が画面にもたらす活力」第5章「ヘラクレスと男性ヌード」第6章「ヴィーナスと女性ヌード」第7章「神話の叙述」と、充実の内容がうかがえる。

 この7章を経てルーベンスとイタリアの双方向の影響関係を検証する、過去最大規模のルーベンス展となるという。

「ルーベンス展―バロックの誕生」記者発表会 2018年3月29日撮影

 また、「ルーベンス展」会期中は西洋美術館のロビーにて、4Kカメラで撮影したアントウェルペン聖母大聖堂の《キリスト昇架》《キリスト降臨》《聖母被昇天》を原寸大に近い大きさで再現することも発表された。これはテレビアニメ『フランダースの犬』のラストシーンで登場する作品として日本でもよく知られている作品だ。

 本展覧会ではルーベンスの作品は45点(帰属・工房作等含む)、その他の作品を合わせて約75点が展示予定だという。これまでにない規模と内容が予定されている「ルーベンス展」。半年後の開催を楽しみに待ちたい。