「高橋コレクション|顔と抽象−清春白樺美術館コレクションとともに」は、コレクター・高橋龍太郎がこれまでに収集してきた2800点以上にもおよぶ作品の中から、「顔と抽象」をコンセプトに高橋自身がキュレーション。現代美術55作家69作品と、清春芸術村が所蔵している日本の洋画・近代美術の16作家39作品、合わせて71作家108作品を、清春芸術村内の清春白樺美術館、光の美術館、梅原龍三郎アトリエにおいて同時に展示する。
本展は、高橋コレクションの原点である草間彌生にはじまり、村上隆、奈良美智、会田誠、森村泰昌、荒木経惟など、これまで高橋が集めた日本を代表するアーティストの作品と、清春芸術村の所蔵作品とが織りなすダイナミックな展示構成となる。この時代を超えた構成について、高橋は「『現代美術』と『近代美術』、あるいは『団体展の作家』が本当に断絶しているのか、という疑問がありました」と話す。「清春白樺美術館で近代の絵画を見たとき、これを現代美術と比較するチャンスだと思ったんです。近代と現代をごちゃ混ぜにして並べることで、その断絶が本当なのかを検証したかった。この狭い日本の中で、それら互いが互いのエネルギーを利用しないのはもったいないと思うんです」。
「顔と抽象」というテーマは、一見すると結びつきが想像しにくいが、ここには「自意識と自意識の解体」が主題として潜んでいると高橋は語る。「いわゆる現代絵画は、自意識が変化してきた結果でもあります。近代の画家たちは、自身の苦悩(自意識)を自画像などで表現してきましたが、現代はこの自意識が解体されている。例えば、清川あさみは糸で顔をつくり出しますが、それも一定ではなく、見る角度によって異なる表情を見せる。『状況』から自意識を見せているんですね」。
高橋はこの「自意識の解体」こそが「抽象」へのプロセスだという。「現代絵画では自意識がなくなり、美意識だけが抽出される。そこではかたちや色、質感といったそのままが純粋なかたちで表出される、つまり抽象画です。抽象画を、自意識を消し去ろうとする試みだとすれば、自意識の強さをスペクトル(連続体)として並べて、絵画の歴史を切り取ることができます」。
自意識が如実に表出されていた近代絵画から、自意識が解体された現代絵画、そしてその自意識がなくなった抽象画、というスペクトル。本展は、長年にわたりコレクションを築いてきた、高橋独自の視点に触れる機会となる。
なお、会期中には高橋と現代美術家の会田誠、ミュージシャンの藤巻亮太による対談も行われるのであわせてこちらもチェックしてほしい。