19世紀ヨーロッパに興った、主人公が色々な体験をとおして内面的に成長する過程を描いた「成長譚(ビルドゥングス・ロマン)」。本展タイトルに用いられる「ビルディング・ロマンス」は、人間の生と結びついたこの小説ジャンルをもとにした造語だ。
「ビルディング・ロマンス|現代譚(ばなし)を紡ぐ」展は、20世紀以降の美術から切り離された「物語」や「ロマン」を、再び現在の表現のなかに見出すことを試みる展覧会。ここでの「ロマン」とは、国家や民族といったものではなく、家族や恋人、土地など、身近なものとの関わりのなかにあるものを指す。
本展に参加するのは、アピチャッポン・ウィーラセタクン、飴屋法水、志賀理江子のほか、パフォーマンスや建築など多様な分野で活動する「悪魔のしるし」、文化人類学者としての活動歴を持ち、その後コンセプチュアルな作品を展開しているスーザン・ヒラーの5名。
会場では、志賀の新作を含む約6点を展示。独自の世界を構築する作家たちは、訪れた人に、見えにくくなった人間性や地域の物語を示してくれるだろう。