すべての物事は作品のツールになる
ルー・ヤンといえば、ヴェネチア・ビエンナーレ(2015、2022)やアテネ・ビエンナーレ(2016)、上海ビエンナーレ(2012、2018)をはじめ、国際的な展覧会に数多く参加しており、その作品は評価が高い。最近ではBMWアートジャーニー(2019)、ドイツ銀行アーティスト・オブ・ザ・イヤーを(2022)を受賞している。
水中でカエルの死骸が音楽に合わせて踊る《復活! カエルゾンビ水中バレエ》(2011)や、『新世紀エヴァンゲリオン』をモチーフにした《The Beast-Tributesto Neon Genesis Evangelion》(2012)など、過激な表現とアニメやゲームといった若者らしいモチーフで注目されることの多い中国人アーティストだが、その本質はサブカルチャーやメディアアートといった枠組みでは推し量れない。
制作には、ゲームエンジン、3Dアニメーション、ビデオゲーム、インスタレーション、ホログラフィック、モーションキャプチャライブ、VR、プログラム操作など幅広い領域をカバーしており、科学者、心理学者、パフォーマー、デザイナー、実験作曲家、ポピュラー音楽プロデューサー、ロボット、アイドルなど様々な分野で活動する人々と連携してつくられている。
彼女と言葉を交わすほど、その本質は生や死、老いといった生物にとって避けられない命題に対する貪欲な探求心と、学問や文化、ジャンルの隔たりを越境して作品につなげる究極の雑食性にあるとわかってくる。
──私があなたの作品に強い関心を持ったのは、2019年にUCCA(中国・北京)で開催された実験的な展覧会「IMMATERIAL/ RE- MATERIAL:A briefhistory of computing art」で作品を見てからです。この展覧会は、 “非物質/再物質:コンピューター芸術の歴史”をテーマに、メディア芸術に焦点を当てたかなり大規模なものでしたね。参加した30人余りのアーティストの作品を通じて、60年代から現在までのメディア・アートの発展の過程が整理されていましたが、ルー・ヤンさんの作品《物質界の大冒険》には真実と仮想空間、メタ宇宙、ゲーム、VRなどの要素が含まれていました。まずは、この作品について教えていただけますか?