• HOME
  • MAGAZINE
  • INTERVIEW
  • 西洋美術史にいない“女性”を描きたかった。エミリー・メイ・ス…

西洋美術史にいない“女性”を描きたかった。エミリー・メイ・スミス インタビュー

象徴主義、シュルレアリスム、ポップ・アートなど美術史における絵画のムーブメントに敬意を表しながら、社会的・政治的メッセージを込めた作品を制作するエミリー・メイ・スミス。作品のテーマと主要な「ほうき」のモチーフ、転機となった出来事など、これまでの軌跡について話を聞いた。

聞き手・構成=編集部

エミリー・メイ・スミス。背後の作品は《GLEANER ODALISQUE》(2019)

「ほうき」に込める思い

──スミスさんの作品の多くには「ほうき」が多く登場しています。印象的なモチーフでもあるこのほうきは、何に由来しているのでしょうか?

 ある日の朝、ブルックリンの自宅から仕事場へ行く途中、道端にほうきが捨てられている光景を見かけました。それは、ぞんざいに“打ち捨てられている”といった表現がぴったりで、ふと、ほうきというものは家の中でもっとも虐げられている存在なのではないか?と思いました。

 その後もたびたび道端でほうきを見かけましたが、折れていたり、繊維がまるで髪の毛のようにわーっと散らばっていたり、しだいに人間のように見えてきて、ほうきに私自身の姿を投影するようになったんです。

──それはいつ頃の出来事ですか?

 2013年頃です。当時、私はアーティスト・アシスタントとパートタイムの仕事を掛け持ちして生計を立てていました。アシスタントという職業は、すごくたくさんの労働をするけれど、表舞台に立つことはないですよね。それが、打ち捨てられたほうきであり、たまたま当時のボーイフレンドと見たディズニーの映画『ファンタジア』(1940)に登場するほうきのようでもあるように感じられました。

 『ファンタジア』では、たんに肉体労働の象徴だったほうきが、意思を持ち物語の主導権を握っていきます。その表現は、自分が描きたかったことと共鳴するように感じられました。

展示風景より、《THE GLEANER AND ME》(2019)

──描きたかったこととは、具体的にどういう世界ですか?

Exhibition Ranking