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2016.10.13

東京都、都立美術館の写真撮影解禁へ舵? 各美術館の反応は

東京都立の美術館・博物館での作品写真撮影に関して、東京都は5日に行われた都議会本会議において、自民党・早坂義弘議員の質問に答えるかたちで「解禁」の姿勢を打ち出した。実現すれば大きくな方向転換となるが、実現の可能性は果たしてどれくらいあるだろうか。

東京都美術館 出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)

積極的に呼びかけへ

今回の写真撮影に関する問題は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、「レガシー(遺産)として都立美術館・博物館の写真撮影解禁を提案したい。事情ある作品のみ一部禁止の方向へ大きく舵をきってもらいたい」という議員の質問が発端となった。

小池百合子都知事も「私は全然オーケーだと思っている」と同意の姿勢を見せたこの問題。これまで都立の美術館・博物館では館ごと、あるいは展覧会ごとに異なるルールを設け、場合によっては撮影可能としてきた。しかしながら、企画展で海外や他の美術館、あるいは作家から作品を借りる場合、著作権等の問題をクリアする必要があるため、撮影不可とする場合が多いのが実情だ。

この撮影解禁に関し、都立美術館・博物館を所管する東京都生活文化局は、「撮影機会を増やすよう(館への)呼びかけを積極的にしていく」としながらも「(撮影の際の)シャッター音で過去に苦情があったのも事実なので、そこをどう配慮するかが課題」と回答。「2020年までに(方策を)一つひとつ考え、各館に声をかけていく」としている。

現場の反応は

では、実際の現場はこの「撮影解禁」をどう受け止めているのだろうか。今年、改修を終えてリニューアルオープンした東京都写真美術館は、これまで来館者から作品の写真撮影に対する要望は「あまりなかった」としながらも、撮影については「著作権について勘案しながら、前向きに検討していきたい」としている。

また、海外の美術館展などを数多く開催する東京都美術館は、「今年度の自主企画展「木々との対話」で一部実施したところ、多くの方からおおむね好評をいただいている」と撮影に対する好感触があったことを認めつつも、全面解禁については「著作権者や借用先の意向によります。当館の場合、特別展の作品借用先が外国の美術館や所蔵家が多いのですが、今後は関係者に働きかけていきたいと思います」と回答。

現在、改修休館中の東京都現代美術館はこれまでも全面的に撮影を禁止するのではなく、一部写真撮影可とする対応をとってきた。来館者からは「『写真撮影させてほしい』『写真撮影が鑑賞の妨げになる』」という賛否両論があり、撮影解禁については「他のお客様の鑑賞の妨げ、ご迷惑にならないような配慮が必要と思われます。著作権の保護を遵守しつつ、展覧会ごとに、できる限り対応してまいります」とコメントしている。

現実的に、借用先との契約という実務的な問題と、マナーの問題が大きなハードルとなる美術館での作品撮影。2020年までにどのような具体策が練られていくのか、注視していきたい。