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この冬読みたい。アートファン必見の「グラフィックノベル」ベスト10

フランス語圏発のマンガを「バンド・デシネ」(または「BD(ベーデー)」)と呼ぶのを聞いたことがあるだろう。イギリスやアメリカでは「グラフィックノベル」と呼び、いまやこの呼称のほうがより一般的になってきたが、概して、オールカラーで描かれ、重要人物の伝記や、社会派の内容であることが多いといえる。そのうえで、プロットの創意工夫をはじめ、実験的なコマ割りや絵の描き方など、芸術的な要素がちりばめられているのが大きな魅力だ。しかし近年、国を問わず若手の作者が多く登場・活躍し、そのあり方はより自由で多彩になっている。ここでは、この冬読みたいグラフィックノベル10選を紹介。多様な進化を続けるグラフィックノベルの魅力と出会うきっかけに。

文=中村志保

『Munch - ムンク』(2018年、誠文堂新光社)ステフン・クヴェーネラン 作・画/枇谷玲子 訳

 表紙のインパクトを最後まで裏切らない、アート好きにもそうでない人にもイチオシのグラフィックノベル。《叫び》があまりにも有名なエドヴァルド・ムンクだが、画家の伝記や関連本を読んだことがない人も多いはず。いや、読んだことがある人にとっても、読後は、新たなムンク像に出会ったような新鮮な気分になることを約束したい。

 作者は、新聞の風刺画なども手がけるノルウェーの鬼才、ステフン・クヴェーネラン(なんと16歳で漫画家デビューを果たしている)。“良き風刺画”のテイストに、『ジキル博士とハイド氏』や『フランケンシュタイン』を思わせるちょっぴりゴシックホラーな要素が加わり、物静かながら破天荒で不可解なムンクの人生を追う物語になんともマッチ。

 また、作者自身が本書を描くために、ムンクが作品の中に描いた街をたどり、その旅景色と本書の構想がムンクの物語とパラレルで進行するという、実験的な展開も見ものである。

 それゆえか、読み手とムンクの距離がぐっと近く感じる効果もある。なぜムンクが《叫び》のような絵を描いたのか、読んだ人それぞれが独自の解釈を深めることができるだろう(それが正しいかどうかは問題ではなく)。

『氷河期 -ルーヴル美術館BDプロジェクト-』(小学館集英社プロダクション、2010年)ニコラ・ド・クレシー 著/大西愛子 訳

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