読む時間がない? ならばまずはこの1冊
マイケル・フィンドレー『アートの価値 マネー、パワー、ビューティー』
冒頭から企画潰しのようで恐縮だが、こちらは読書が苦手な人や、不景気におけるアートマーケット事情を知りたい人におすすめの、不朽の名著。ニューヨークのアートディーラー出身で、後にオークション会社へ就職、さらに転職しギャラリー運営に携わるという、半世紀にわたって余すことなくマーケットを闊歩してきた重鎮による、リーマンショック直後に出版された回顧録兼教科書のような一冊。世界中のマーケットをいまだに牛耳る欧米マーケットのプレイヤーや動き方、不文律が描写されており、とくにリーマンショック後の不景気時代のリアリティは、淘汰の気配に満ちた現在に多大なる示唆を与えてくれるだろう。文体は口語体で、たっぷりのウィットとブラックユーモアが添えられているので非常に読みやすいはずだ。
マイケル・フィンドレー=著 バンタ千枝、長瀬まみ=訳
美術出版社 2300円+税