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2022.2.25

世界的デザイナー、コンスタンチン・グルチッチが見据える「ニューノーマル」とは?

パンデミックは私たちの日常生活全てに影響を与えている。新しい生活様式が定着しつつある今、ドイツ、ベルリンの現代美術館で、世界的なインダストリアル・デザイナー、コンスタンチン・グルチッチが「ニューノーマル」を模索する展覧会を開催している。気鋭のデザイナーが見る未来のかたちとは。

文=河内秀子

コンスタンチン・グルチッチ「New Normals」展示風景より Photo by Florian Böhm
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 ドイツ、ベルリンに拠点を置くコンスタンチン・グルチッチ。1991年の独立から30年以上、ヴィトラ、カッシーナ、フロス、マジス、スマートなど、世界各国の様々なメーカーで唯一無二のデザインを生み出し続けている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)やポンピドゥーセンターなどのコレクションに収蔵されているものも多い。一過性のトレンドにのらず、スタイルに固執もしない。機能を追求して実直に試作を繰り返すなかで生まれたデザインは、既存のかたちとは一線を画し、後に新たなスタンダードとなったものもある。その彼が「ニューノーマル」をタイトルに掲げて展覧会を行うと言われたら、興味を持たずにはいられない。グルチッチの目に映っている未来とはどのようなものなのだろうか。

「邸宅を生かしたミュージアムは家具デザイナーには難しかった。作品を置くだけではインテリアになってしまうから」とグルチッチ。部屋の間にスロープを敷いたりして、居住空間を展示空間にする工夫がなされた Photo by Florian Böhm

小さな違和感が、いつしかノーマルとなる

 会場のハウス・アム・ヴァルトゼーは、1922年に建てられた邸宅と、湖に面した広々とした庭を生かしたミュージアムだ。2005年からは、ベルリンに拠点を置くアーティストや、建築家、デザイナーや音楽家を招待し、展示を企画。これまでにオラファー・エリアソン、タシタ・ディーン、カタリーナ・グロッセ、ティノ・セーガル、ヴェルナー・アイスリンガー、ザウアーブルッフ+ハットンなどが新作を発表している。

 入口から足を踏み入れると、まず床や壁に固定された手すりに自転車用のチェーンロックで結び付けられた屋外用チェアが目に入る。ベルリンでは盗難防止のためかテラス席の家具にチェーンを付けている飲食店をしばしば見かけるのだが、それを思い起こさせるインスタレーションだ。グルチッチは本来の機能とは違う使い方をされているモノに注目する。

「最初はあれ?と違和感を感じたものが、そこらじゅうで見かけるようになって、いつしか私たちはそれをノーマルなのだととらえるようになる」と、グルチッチは言う。