Beepleの衝撃、加速するバブル...「NFT元年」を振り返る

2021年はアート界にとって大きな変化の年だった。NFT(非代替性トークン)を用いたいわゆる「NFTアート」が勃興。超高額での落札や、オークションハウスの参入など、これまでにはない動きがアート界を揺さぶったのだ。この1年間の動きとそのインパクトを、雑誌『美術手帖』でブロックチェーン特集(2018年12月号)およびNFTアート特集(2021年12月号)を担当した編集者・牧信太郎と、スタートバーンCEOの施井泰平が振り返る。

Beeple Everydays - The First 5000 Days 出典=クリスティーズのウェブサイトより

NFTアート以前/以後

 特集内で「NFT事件簿」という記事をつくったのですが、2021年3月以降にNFT×アート関連の多くの「事件」が起きていたことがよくわかります。ビープルやせきぐちあいみ作品の落札や村上隆さんのNFT作品の取り下げなど、振り返るとその時期から、コロナの影響もあってか、このNFTを利用したデジタルアートの売買が加速度を増して盛り上がっていきましたね。でも冷静にNFTをウォッチしている人たちの考えは似通っていて、バブル的に資本が流れ込んでいるけど「今はまだ黎明期」という感じですよね。施井さんは2018年の『美術手帖』ブロックチェーン特集以前からこの界隈を見ていると思うのですが、今年をどう振り返りますか?

『美術手帖』2021年12月号

施井 長い目で見ると、デジタルアートとブロックチェーンの相性がいいということはわかってました。が、そのタイミングが圧倒的に早くやってきた感じですね。もともとイメージしていた世界が来たわけだけど、スタートバーンの事業としては、その「津波」に潰されない方法も考える必要がありました。

 スタートバーンだと事業の方向性を考えるなかで、NFT界隈の時流を読まないといけないですよね。ブロックチェーン特集を組んだときは、絵や彫刻など、どちらかというとフィジカルなアート作品とブロックチェーンの関係とその未来について考える企画にしたのですが、今回は「NFTアート(クリプトアート)」に特化した特集にしました。理由は、NFTアートの世界には独自の「文脈」がすでにできあがっていて、とくにその売買のスタイルは既存のアートとはまったく別の生態系と呼べるもので、そのアーティストとコレクターの関係がとても民主的で面白いと思えたからです。これは従来のアート界から見ていると怪しく見えて(笑)かつ拒否反応が出やすい生態系ですが、施井さんはこの状況や生態系を早くから認識されていたのではないでしょうか?

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