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2022.1.4

田中泯からヘレン・シャルフベックまで。2022年見逃せないアートムービー

2022年に公開される数多の映画から、アート・カルチャーの視点でとくに注目したい作品をピックアップ。公開日順に紹介する。

『名付けようのない踊り』より (C)2021「名付けようのない踊り」製作委員会
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名付けようのない踊り(1月公開)

 世界中の名だたるアーティストたちから厚い信頼を得ているダンサー・田中泯。その姿に密着したのが『名付けようのない踊り』だ。監督は『メゾン・ド・ヒミコ』などで知られる犬童一心。

 田中泯は1966年からソロダンス活動を開始。78年にパリで海外デビューしたことをきかっけに注目を集め、以来、3000回を超えるダンス公演を行ってきた。本作では、2017年8月から2019年11月まで、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影を敢行。どんなジャンルにも属さない、独自の「場踊り」によって他に類を見ない存在となった田中泯の、踊りの原点に触れることができる。映画を通じて田中の踊りと呼応するような体験が得られるだろう。

公開:2022年1月28日 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9、Bunkamura ル・シネマほか全国公開
監督:犬童一心
出演:田中泯、石原淋、中村達也、大友良英、ライコー・フェリックス、松岡正剛
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ

ゴヤの名画と優しい泥棒(2月公開)

『ゴヤの名画と優しい泥棒』より ©PATHE PRODUCTIONS LIMITED 2020

 フランシス・ゴヤの名作《ウェリントン公爵》が1961年、展示されていたロンドン・ナショナル・ギャラリーから盗まれた。犯人は年金暮らしの老人、ケンプトン・バントン。この実際に起きた稀代の盗難事件を描いた映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』が2月に公開される。

 バントンは、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが購入したばかりの作品を盗み、それを“人質”に、「絵画を返して欲しければ、年金受給者のBBCテレビの受信料を無料にせよ!」と書いた脅迫状を出す。孤独な高齢者がテレビに社会とのつながりを求めていた時代のなか、バントンは高齢者のために絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと目論んだのだった。一癖ある主人公ケンプトン・バントンを演じるのは、『アイリス』(01)でアカデミー賞助演男優賞を受賞、『ハリー・ポッター』や『パディントン』シリーズや、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』など多くの話題作に出演するジム・ブロードベント。長年連れ添った妻ドロシー役は、『クィーン』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したヘレン・ミレンが演じる。

公開:2022年2月25日 TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督:ロジャー・ミッシェル
出演:ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ

ENNIO(原題)(3月公開)※コロナの影響で公開延期(1.14追記)

『ENNIO』より

 2020年7月に91歳でこの世を去ったエンニオ・モリコーネ(1928〜2020)。日本でも超ロングランヒットを記録した『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)をはじめ、1961年以来、500作を超える映画とテレビの音楽を手がけたこの巨匠の姿をとらえたのが『ENNIO』(原題)だ。

 本作のメガホンを取ったのは、『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』の監督であり、エンニオ・モリコーネの友人でもあるジュゼッペ・トルナトーレ。モリコーネが音で命を吹き込んだ数々の傑作の名場面と、最高の音響技術で再現された日本公演を含むワールドコンサートツアーの演奏で、巨匠の伝説を紐解く。さらに、クエンティン・タランティーノやクリント・イーストウッド、ウォン・カーウァイ、ジョン・ウィリアムスといった70人以上の監督やプロデューサー、音楽家たちのインタビューを収録。モリコーネが偉業を成し遂げた秘密を解き明かす。また、モリコーネのプライベートライフとコメント、初公開となるアーカイブ映像も見逃せないポイントだ。

公開:2022年3月 TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:エンニオ・モリコーネほか
配給:ギャガ

魂のまなざし(夏公開) 

『魂のまなざし』より

 モダニズムを代表する画家のひとりとして知られる、フィンランドの国民的画家ヘレン・シャルフベック(1862〜1946)。その生誕160年を記念して公開される映画が本作『魂のまなざし』だ。

 本作は、シャルフベックの画業と人生を決定づけた1915年から1923年の時代を描いたもの。シャルフベックは、ロシア帝国の支配下にあったフィンランドに生まれ、祖国の独立と内戦を経て封建的な世界が崩壊していく過程と歩調を合わせるように、画家として、女性として、一人の人間として自律的に生きていく。狂おしい愛に打ちのめされ生涯の友情を得る中で、自分自身と身の回りの存在を凝視し、その本質を描きだす手法をひたすら追求した。北欧の透明な光に輝く自然や街並みとともに、シャルフベックの凛とした姿が描かれる。

公開:2022年夏 Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
監督:アンティ・ヨキネン 
出演:ラウラ・ビルン ヨハンネス・ホロパイネンほか
配給:オンリー・ハーツ