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巨大美術館の「お引越し」に迫る(前編)。1万3000点の収蔵品を移し替える大規模プロジェクト

横浜美術館がYouTubeにアップした「美術館の裏側−作品の大移動」が話題を呼んでいる。この動画は開館以来初となる大規模改修工事のため、収蔵品を美術館の外に移動させるまでの一連の作業を約3分の動画にまとめたもの。コンパクトな動画のなかには、通常の美術館鑑賞者の想像を上回るダイナミックな世界が繰り広げられていた。美術館の引越しという大規模プロジェクトの実情に前後編で迫る。

文=浦島茂世

横浜美術館 撮影=笠木靖之

3年がかり! 壮大な「お引越し」計画

 「展覧会における作品の展示や撤去は作業日程が決まっているので、とにかくタイト。一般的な企画展ではおよそ一週間くらいしかありません。また、移動する作品数は多くても300点くらい。今回のように数年間かけて約1万3000点の収蔵品を全部別の場所に移し替えるなんて、当初はまったくイメージできませんでした」と語るのは、横浜美術館で収蔵品の移動を統括した学芸グループのコーディネーター・庄司尚子。2018年から取り組んでいた収蔵品の移転作業が2021年8月にすべて完了し、ようやく一息つけたところだという。

「3月に休館してから半年かけてようやく美術館をからっぽにすることができました。美術館の移転作業って、時間も手間もかかるんです」(庄司)。

 横浜美術館の開館は1989年。数々の展覧会を開催するほか、市民や子供のためワークショップが開かれるアトリエ、11万冊以上の蔵書を持つ美術情報センターなど、様々なかたちで美術とふれあう機会を提供し、平成の約30年間を一気に駆け抜けた。

 そして、本年3月1日より開館以来初となる大規模改修工事を行うため、長期休館することとなった。現在のところ2023年度中のリニューアルオープン(予定)を目指している。

 横浜美術館の大規模改修工事は、非常に大掛かりなものだ。電気・衛生・空調設備は全面更新され、外壁防水、バリアフリーの向上が図られ、エレベーターの更新も行う。そして、収蔵庫は増設され、上階にあった美術情報センターはグランド・フロアーに移動される予定だ。

 「丹下健三設計による横浜美術館は、館の中心部にある半円柱部分、5〜7階部分が収蔵庫となっています。当初は余裕があった収蔵庫も、現在は床すらも見えないほど作品があふれていました。空調設備を更新し、さらに収蔵庫の増床を行うため、いったん空調設備をすべて止めることとなります。そのため、収蔵品をすべて別の倉庫に移す必要がありました」(庄司)。

苦戦する引越し先探し

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