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ソール・ライターから白髪一雄、鳥獣戯画まで。2020年に注目すべき展覧会ベスト20

アーティゾン美術館をはじめ、京都市京セラ美術館や弘前れんが倉庫美術館など新施設の開館が続々と予定されている2020年。オリンピックで国際的な注目度も高まるなか、20年に予定されている大規模展覧会より、編集部注目の展覧会ベスト20を会期順に紹介する。

 

白髪一雄 貫流 1973 キャンバスに油彩 東京オペラシティ アートギャラリー蔵 撮影=早川宏一

大きな反響を呼んだ国内回顧展の第2弾。「永遠のソール・ライター」展(Bunkamura ザ・ミュージアム、1月9日~3月8日)

ソール・ライター セルフ・ポートレイト 1950年代 ゼラチン・シルバー・プリント (C)Saul Leiter Foundation

 2017年に渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで行われた国内初の回顧展が8万3000人以上の来場者数を記録し、大きな反響を呼んだ写真家ソール・ライター。その回顧展の第2弾が再び同館で開催される。

 1950年代からニューヨークで第一線のファッション写真家として活躍したライターは、その後表舞台から突如姿を消した。しかし2006年、自身が83歳の時に刊行された写真集をきっかけにその作品が世界的に評価されるように。「カラー写真のパイオニア」とも呼ばれるほどの天性の色彩感覚をもったライターの作品は、未だそのアーカイヴの発掘途中にある。今回はその膨大なアーカイヴのなかから、多くの未公開作品と豊富な作品資料を展示。ソール・ライターの新たな一面が発見できる展覧会となる。

 

初期から晩年まで、その活動の全容に迫る。「白髪一雄」(東京オペラシティ アートギャラリー、1月11日〜 3月22日)

白髪一雄 天空星急先鋒 1962 キャンバスに油彩 兵庫県立美術館蔵

 具体の中心メンバーとして、近年では国外からも熱いまなざしを注がれる白髪一雄。本展はその活動の全貌を網羅した、都内で初の大規模な個展となる。

 具体美術協会に参加する以前から支持体に足で直接描く「フット・ペインティング」の制作を始めていた白髪は、身体運動を画面の主役に据えるという方法を通して既存の価値観を壊し、ものを作るという行為の原初にたち返ることを試みた。本展には、初期から晩年までの絵画約60点をはじめ、実験的な立体作品や伝説的パフォーマンスの映像、ドローイングや資料など合わせて約100点が出品。白髪の活動の全体を見るまたとない機会となる。

 

約2倍の展示スペースに新収蔵品も。開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」(アーティゾン美術館、1月18日〜3月31日)

新収蔵品のヴァシリー・カンディンスキー《自らが輝く》(1924)

 2019年7月に旧ブリヂストン美術館から改名し、新たに誕生するアーティゾン美術館。その開館を記念して、同館が所蔵する古美術から近現代作品までを展示する開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」が開催。

 休館中も作品収集に取り組んだ同館は、本展でカンディンスキー、ジャコメッティ、松本竣介などを含む新収蔵作品31点を初公開。長らく同館を代表してきたモネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソなどのコレクションにも、今までとは異なる視点から新たな光を当てる。また、新築工事により一新された館内空間、最新設備にも注目したい。チケットは日時指定予約制で、スムーズな鑑賞が可能になるだけでなく、チケット料金もお得になる。この機会にぜひ利用したい。

 

「北欧のフェルメール」12年ぶりにその作品が集結。「ハマスホイとデンマーク絵画」(東京都美術館、1月21日~3月26日)

ヴィルヘルム・ハマスホイ 背を向けた若い女性のいる室内 1903-04 ラナス美術館蔵 (C) Photo Randers Kunstmuseum

 静謐な室内画が高く評価され、17世紀オランダ風俗画の影響が認められることから「北欧のフェルメール」と称される、デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイ。その作品が12年ぶりに国立西洋美術館に集結する。

 本展では、初公開を含むハマスホイ作品約40点の展示に加え、19世紀デンマーク絵画を日本で初めて本格的に紹介。西洋美術のメインストリームから離れた独自のモダンな感性と、作品に息づくデンマークならではの「ヒュゲ(hygge:くつろいだ、心地よい雰囲気)」の情緒を存分に堪能できるだろう。

 

待望の日本初個展。「ピーター・ドイグ展」(東京国立近代美術館、2月26日~6月14日)

ピーター・ドイグ スキージャケット 1994 キャンバスに油彩  295×351cm テート蔵 (C)Peter Doig. Tate: Purchased with assistance from Evelyn, Lady Downshire's Trust Fund 1995. All rights reserved, DACS & JASPAR 2019 C3006

 1994年にターナー賞にノミネートされて以降、同世代や後続世代への多大な影響から「画家の中の画家」と評されるピーター・ドイグの個展が、いよいよ国内でも開催される。

 テート、パリ市立近代美術館、分離派会館など世界の名だたる美術館で個展を開催してきたドイグは、ゴッホなどの近代画家の作品の構図やモチーフ、映画のワンシーンや広告グラフィック、自らが暮らしたカナダやトリニダード・トバゴの風景など、多様なイメージを組み合わせた絵画を制作。どこかで見たことのあるようなイメージを用いながら、全く新しい世界観を展開するドイグの作品を、是非この目で体験したい。

 

全作品初来日、世界の名品が一堂に。「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(国立西洋美術館、3月3日~6月14日)

ヨハネス・フェルメール ヴァージナルの前に座る若い女性 1670-72頃 キャンバスに油彩 51.5×45.5cm (C)The National Gallery, London. Salting Bequest, 1910

 イギリスが世界に誇るロンドン・ナショナル・ギャラリーの世界初の国外所蔵品展が、2020年の春に国立西洋美術館で開催される。

 「西洋絵画の教科書」とも言われるほど、幅広く質の高いコレクションを持つ同館。ルネサンスから19世紀ポスト印象派まで、フェルメールやゴッホらの作品を含む計61作品全てが日本初公開となる。ヨーロッパ美術を網羅するそのコレクションを概観するとともに、イギリスとヨーロッパ大陸の交流という視点から西洋絵画の歴史を紐解いてゆく。

 

法隆寺金堂の世界が再び。特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」(東京国立博物館、3月13日~5月10日)

法隆寺金堂壁画(模本) 第1号壁 釈迦浄土図 桜井香雲模 明治17(1884)頃 東京国立博物館蔵 ※展示期間=前期(3月13日~4月12日)

 1950年法隆寺金堂の火災をきっかけに文化財保護法が成立してから、70年の節目となる2020年。その法隆寺金堂の世界が東京国立博物館(本館特別4室・5室)で再び蘇る。

 世界遺産・法隆寺の西院伽藍の中心をなす世界最古の木造建築・金堂には、かつてその壁におよそ1300年前に描かれた壁画が存在した。残念ながら外陣の壁画12面は1949年に焼損してしまったが、現在にもその優れた模写が残されている。本展ではその模写をはじめ、再現された現在の壁画、そして日本古代彫刻の最高傑作の一つである国宝・百済観音など金堂ゆかりの諸仏を展示。文化財を伝承する人々の手によって復活する、法隆寺金堂の美の世界を体感することができる。

 

世界が注目するアーティストの大規模個展。「オラファー・エリアソン」(東京都現代美術館、3月14日~6月14日)

 自然現象を応用した巨大な展示空間で人々の知覚を揺さぶるアーティスト、オラファー・エリアソン。2003年にテート・モダンのホールを使ったインスタレーションで200万人を動員した作家の個展が、ついに日本でも開催される。

 本展のテーマは「エコロジー」。自然を再構築したインスタレーションや彼のルーツであるアイスランドの風景写真から近年の建築やデザインのプロジェクトまで、環境や社会に対するアートの多面的な可能性を探求し続けるエリアソンの試みを紹介する。詳細は未発表だが、東京ならではの展示構成を検討中だということ。期待が高まる。

 

ホキ美術館が誇る写実絵画を一堂に。「超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵」(Bunkamura ザ・ミュージアム、3月18日~5月11日)

生島浩 5:55 2007-10

 「写実絵画の殿堂」と呼ばれるホキ美術館の所蔵作品を紹介する展覧会が、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催される。

 現在ブームとも言える盛り上がりを見せている写実絵画。1年に数点しか仕上げることができないほど丁寧に時間をかけて描かれた作品の数々は、見たままに忠実でありながら写真や映像とは異なった存在感を放つ。本展では、ホキ美術館が所蔵する約480点の写実絵画コレクションの中から、生島浩や石黒賢一郎など現代写実絵画を代表する作家の作品約70点が集結。写実絵画の醍醐味を存分に楽しむことができる展覧会となる。

 

新館「東山キューブ」での開館記念展。「杉本博司 瑠璃の浄土」(京都市京セラ美術館、3月21日〜6月14日)

杉本博司 OPTICKS 008 2018 (C)Hiroshi Sugimoto / Courtesy of  Gallery Koyanagi

 京都市京セラ美術館では、リニューアルに伴い新たにオープンする新館「東山キューブ」の開館記念展として、杉本博司の京都の美術館における初の大規模展を開催。

 杉本は、1970年代より大型カメラを用いた高度な技術と独自のコンセプトにより写真作品を制作してきた現代美術作家。本展タイトルの瑠璃とは、ラピスラズリーの群青色や硝子などを表し、また薬師瑠璃光如来へも繋がるもの。古代から人の心を捉えて離さないこの不思議な物質をキーワードに、世界初公開となる大判カラー作品シリーズ「OPTICKS」や、硝子にまつわる様々な作品や考古遺物を展示し、宗教、科学、芸術が交錯する杉本の創作活動と日本人の心の在り様を改めて考える。

日本の美術館では初の大規模個展。「ヤン・ヴォー展(仮)」(国立国際美術館、4月4日〜6月14日)

 ベルリンとメキシコシティを拠点とし、写真や資料を組み合わせたインスタレーションで、アイデンティティの問題などを扱ってきたベトナム出身の作家、ヤン・ヴォー。日本の美術館においては初となる作家の大規模個展が国立国際美術館で開催される。詳細は未発表だが、世界的に注目を集めるアーティストの個展に期待が高まる。

 

田根剛設計の美術館がオープン。開館記念展 春夏プログラム「Thank You Memory  −醸造から創造へ−」(弘前れんが倉庫美術館、4月11日〜8月31日)

潘逸舟 マイ・スター 2005 (C)Han Ishu Courtesy of ANOMALY

​ 明治・大正期に建設された近代産業遺産の吉野町煉瓦倉庫が改修され、2020年4月11日に弘前れんが倉庫美術館として新たに生まれ変わる。設計デザインを建築家・田根剛が手がけたことで注目を集めた同館は、そのプログラム第一弾として展覧会「Thank You Memory  −醸造から創造へ−」を開催。

 参加アーティストはイン・シウジェン、ジャン=ミシェル・オトニエル、笹本晃、畠山直哉、藤井光、奈良美智、ナウィン・ラワンチャイクン、潘逸舟。本展は場所と建物の「記憶」に焦点をあて、上記8名の現代アーティストたちによる独創的な視点で再⽣するとともに、煉⽡倉庫のダイナミックな空間を披露する。過去、現在、そして未来へと「記憶」が継承されていく現場をぜひ体感したい。

 

ヴェネチアでの展示が東京でも。「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 Cosmo-Eggs | 宇宙の卵」(アーティゾン美術館、4月18日~6月21日)

撮影=ArchiBIMIng /写真提供=国際交流基金

​ 2019年5月に開幕した、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館での成果を紹介する帰国展がアーティゾン美術館で開催される。

 アーティゾン美術館の前身であるブリヂストン美術館と石橋財団の創設者である石橋正二郎は1956年にヴェネチア・ビエンナーレ日本館を建設寄贈しており、近年当財団は日本館への支援を行なっている。そこで企画された本帰国展は、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館で、キュレーターを務めた服部浩之のもと「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」と題し行われた展示を再構築して公開。美術家、作曲家、人類学者、建築家という異なる専門分野で活躍する4名のアーティストの調和から生まれる展示空間を再び体験することができる。

 

40年ぶりの都内大規模回顧展。「神田日勝 大地への筆触」(東京ステーションギャラリー、4月18日~6月28日)

神田日勝 馬(絶筆・未完) 1970 神田日勝記念美術館蔵

​ NHK連続テレビ小説『なつぞら』に登場する山田天陽のモチーフともなった画家・神田日勝。日勝の没後50年を記念し、東京では40年ぶりとなる本格的な回顧展が開催される。

 北海道・十勝の大地で農業を営みながら制作を続けた作家は、馬や労働者を力強いリアリズムで描いた作品で知られるいっぽう、同時代の美術にも敏感に反応し、多くの新しい試みを行った。厳しい道ながら活躍の場を広げ、人間の孤独や苦悩を描いた代表作《室内風景》を制作して新たな境地に踏み出そうとした矢先、32歳という若さで逝去。本展では、最新の研究成果を交えながら、初期作から後期の前衛的な作品まで画業の全貌を紹介する。

 

草間彌生、村上隆などスター作家が集結。「STARS展:現代美術のスターたちー日本から世界へ」(森美術館、4月23日~9月6日)

草間彌生 ピンクボート 1992 詰め物入り縫製布、ボート、オウル 90×350×180cm 名古屋市美術館蔵

​ 日本という枠を超えて国際的に活躍するアーティストの作品を集めた「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」が森美術館で開催される。

 選ばれたのは草間彌生、杉本博司、奈良美智、宮島達男、村上隆、李禹煥(リー・ウーファン)の6名。今日多様な地域や世代から高い評価を得るこの6名のアーティストの軌跡を、初期作品と最新作を中心に紹介。また彼らの実践が世界からいかに評価されてきたのかを、国境や文化を越えた普遍的な課題の追求、伝統や美学、テクノロジーやサブカルチャーなど、日本固有の社会的、文化的、経済的背景をふまえて探るとともに、1950年代から今日までの日本現代美術の系譜を辿っていく。現代美術初心者にもオススメしたい展覧会だ。

 

新宿の「アートランドマーク」がオープン。「開館記念展I 珠玉のコレクション一いのちの輝き・つくる喜び」(SOMPO美術館、5月28日~7月5日)

フィンセント・ファン・ゴッホ ひまわり 1888 キャンバスに油彩 100.5×76.5cm

​ 日本初の高層階美術館として1976年に開館した東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館は、2020年にSOMPO美術館に改称し新設の美術館棟に移転。開館記念展が5月28日から開催される。

 その第一弾では、同館のマークが象徴する「美術がもたらす心の自由を大切にする」というコンセプトを切り口に、見る人に非日常的な感性への気づきを促す作品約70点を展示。特に注目したいのは、修復を経て10年ぶりに公開する山口華楊の初期大作 《葉桜》、ルノワールの《浴女》、同館のコレクションを代表するゴッホの《ひまわり》などの作品だ。緑鮮やかな季節に披露するのにふさわしい、彩豊かな作品が楽しめる。なお7月18日〜9月4日には開館記念展Ⅱとして、「秘蔵の東郷青児ー多彩な画家の創作活動に迫る」も開催される。

 

ファッションから日本の社会を読み解く。「ファッション イン ジャパン 1945-2020―流行と社会」(国立新美術館、6月3日~8月24日)​

「田中千代グランド・ファッション・ショウ」 大阪 1952 国立新美術館蔵

​ 2020年夏、国立新美術館では「日本のファッション」に着目した展覧会を開催。

 日本のファッションといえば、モダン・ガールからカラス族、やまんばギャルまで幅広いイメージが浮かび上がる。1970年代以降、日本では急激な高度経済成長とともに多様な装いの文化が生み出され、世界からもその独自の展開が注目されてきた。本展では、衣服だけでなく、写真、雑誌、映像といった豊富な資料を通して、戦後から現在に至るまでの日本のファッションを社会現象とともに紐解いていく。

国宝《鳥獣戯画》4巻を一挙公開。「特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて」(東京国立博物館、2020年7月14日~8月30日)

国宝《鳥獣戯画》(甲巻)(平安時代・12世紀、高山寺蔵)

 誰もが知る日本の国宝《鳥獣戯画》。その全4巻を一挙公開する特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」で開催される。

 本展では、これまでの展覧会では実現し得なかった、国宝4巻の全場面を一挙公開するとともに、かつて国宝4巻から分かれた断簡と、原本ではすでに失われた場面を留める模本の数々も展示。あわせて、高山寺の開山堂に安置されている「秘仏」の重要文化財《明恵上人坐像》も特別出品。寺外での公開は、27年ぶりとなる。

 

戦後フェミニズムアートが集結。「アナザーエナジー展:創造しつづける女性アーティスト(仮)」(森美術館、10月1日~ 2021年1月3日)

 第二次世界大戦後の動乱期を経て、多様な拡がりを見せた現代アートの表現。そのなかでも、男性中心の社会構造や既存の価値観に疑問を持ち、挑んだアーティストたちの活動は特記すべきことの一つである。本展では、世界各地で活動する70歳代以上の女性アーティスト約15名の多様な実践を紹介する。

 参加アーティストには、アナ・ボグィギアン、リリ・デュジュリー、ベアトリス・ゴンザレス、スーザン・レイシー、三島喜美代、ロビン・ホワイトなど。1950年代後半から70年代にキャリアをスタートしてから現在まで、精力的に活動を続ける女性アーティストたちが名を連ねる。美術館や市場の評価に関わらず、独自の創作活動を続けてきた彼女たちの根底には、アートに向けられた強い意志と決意が横たわっている。彼女たちの活動は、今日芸術の枠を超えて白熱したジェンダー・イクオリティの議論に、改めてヒントと刺激を与えてくれることだろう。

 

夢のコラボレーションが実現。「開館10周年記念 1894 Visions―ルドン、ロートレックとソフィ・カル(仮)」(三菱一号館美術館、10月24日~2021年1月17日)

 2020年に10周年の節目を迎える三菱一号館美術館。その最後を飾る本展は、同館の所蔵作品を代表する画家であるルドンとトゥールーズ=ロートレックに焦点を当てる。

 これまでほとんど同時に取り上げられることのなかったこの二人だが、旧三菱一号館が竣工した1894年はルドンが色彩の作品を初めて発表した年であり、ロートレックの多作な時期、また作家が参加した『レスタンプ・オリジナル』刊行年と重なるなど意外なつながりがある。本展は、同館と岐阜県美術館の所蔵品を中心に国内外の美術館から作品を収集し、ふたりの活動を振り返るもの。また、フランスを代表する現代アーティストのソフィ・カルが、同館所蔵のルドン作《グラン・ブーケ》から着想を得た新作を含む作品を展示。現存作家とのコラボレーションという新たな試みを含め、期待が高まる。

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