その影響はアート界以外にも 村上隆(@takashipom)
村上隆が投稿するのは関係者との記念写真、愛犬とのセルフィー、SNSで発見したと思しきユニークな動画まで、関心のおもむくまま。しかし多くの人が注目しているのは、惜しみなく紹介されるワークインプログレスの作品やプロジェクトをとらえた投稿だ。
今夏には、ミュージシャンのドレイクが手がけるアパレルブランドとのコラボレーションを思わせるグラフィックを投稿したことで、国内外の多くのメディアが「セルフリークか?」と紹介。いまや美術界のみならず音楽界、ファッション界までが動向をチェックしている。コメント欄に現れるヴァージル・アブロー、ドレイクといった顔ぶれにも注目したい。
豊かな作品世界をそのままに 奈良美智(@michinara3)
絵画や立体作品のみならず、近年は写真の発表も行う奈良美智。奈良のアカウントでは、制作中の作品、貴重な過去作を見ることができる。そして子供や動物といったモチーフが多く見られる奈良作品だが、Instagramでもそれは同様。絵画から抜け出してきたような子供たち、犬や猫、馬といった動物が多く登場する。
いっぽうで、現在は栃木県を拠点とする作家のスタジオの外に広がる緑、庭の桜、故郷の雪景色など、四季を色濃く感じられるのもこのアカウントの特徴だ。ストーリーの更新頻度が高いという、インスタヘビーユーザーには嬉しいポイントも。
生命の輝きをとらえる 川内倫子(@rinkokawauchi)
写真や映像を通して美しさ、醜さ、楽しさ、哀しさといった両極端の要素、宇宙的な広がりを写し出す川内倫子。2004年から十数年にわたりウェブサイト「りんこ日記」を更新するなど、ネットとのつながりが深い川内は、Instagramローンチ翌年の11年にInstagramをスタートした。
日常光景を見つめ、普遍的な生命の輝きへと昇華させる表現によって高い評価を獲得してきた川内写真の真髄は、Instgramのフォーマットを通しても十分に感じることができるだろう。
ひとりの作家の等身大の日常 長島有里枝(@yurienagashima)
写真家としてデビュー以来26年間、社会における「家族」や「女性」のあり方への違和感を作品で問い続けてきた長島有里枝。Instagramでは日々の食卓や小さな出来事など、ありのままの日常風景が投稿されている。
長島は11月3日〜2019年1月31日にかけ、東京・練馬のちひろ美術館にて「作家で、母で つくる そだてる 長島有里枝」を開催。これまで発表を控えてきた自身の子供の幼少期の写真のほか、近作のひとつ《家庭について/about home》を発表するため、こちらもチェックしてほしい。
静やかな写真空間 鈴木理策(@risakusuzuki)
見ることへの問題意識を根底に、聖地として知られる故郷・熊野を継続的に撮影するほか、セザンヌのアトリエなどを写真に収めてきた鈴木理策は今年1月、Instagramに参加した。
投稿写真の被写体はおもに空、樹木、水面などの、鈴木の作品の代名詞とも言える自然風景。しかし、これまで紹介してきた4名と異なり、写真に対するコメントやキャプションがいっさいないため、それがいつ・どこで撮影されたかは明かされない。そのことが、静謐な写真空間をいっそう際立たせている。