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2018.7.28

アートをめぐる現代の諸相を探る。8月号新着ブックリスト(2)

『美術手帖』の「BOOK」コーナーでは、新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を紹介。2018年8月号では、現代アートのありかたを論じた書籍やアートマネージメントについての書籍などを取り上げた。ウェブでは3冊ずつ、2回にわけて紹介する。

評=近藤亮介(美術家)+中島水緒(美術批評)

左から『ヒプノシス全作品集』『アートマネージメントを学ぶ』『アート戦略/コンテンポラリーアート虎の巻』

『ヒプノシス全作品集』

1968年、ロンドンで結成されたデザイン集団「ヒプノシス」。この名前にぴんとこなくても、ピンク・フロイドの印象的なLPジャケット――三角形のプリズムを通過する光線、バタシー発電所の上に浮かぶ巨豚――を見たことがある人は多いはず。本書は、84年までに発表された全作品を網羅し、中心メンバーだった写真家オーブリーによる制作秘話も満載。60~70年代を代表するバンドたちとの友情、各作品で駆使されたアナログ技法など、往時の音楽と視覚芸術との蜜月が偲ばれる。(近藤)

『ヒプノシス全作品集』
オーブリー・パウエル=著
シンコーミュージック・エンタテイメント 5000円+税

『アートマネージメントを学ぶ』

つくり手と受け手、作品と社会とをつなぐアートマネージメント。その活動内容は、展覧会やアートプロジェクトの企画・運営、現場でのネゴシエーション、人材の育成など多岐にわたる。経験豊富なキュレーターやギャラリストが自身の経験をもとに、アートマネージメントの具体的な業務や学ぶべき理論的背景を解説する。文化行政と美術館の関係、国際展に期待される役割、地方で行われるアートプロジェクトの実態など、アートを支える様々な制度が本書から見えてくる。(中島)

『アートマネージメントを学ぶ』
新見隆+伊東正伸+加藤義夫+金子伸二+山出淳也=著
武蔵野美術大学出版局 2600円+税

『アート戦略/コンテンポラリーアート虎の巻』

編集者・クリエイティブディレクターとして知られ、現代写真ギャラリーG/P galleryも主宰する後藤繁雄が送る、現代美術入門書。自身のブログ記事をまとめた本書は、一般的に理解されにくい現代美術の「価値」や、それを生み出す「アートワールド」について、著名アーティストや必読書を例示しながら、平易な言葉で解説する。京都造形芸術大学で後進を育成し、また若手アーティストを積極的に発掘してきた著者らしい、アートの未来を担う者たちへの慈愛に満ちあふれた1冊。(近藤)

『アート戦略/コンテンポラリーアート虎の巻』
後藤繁雄=著
光村推古書院 3000円+税

『美術手帖』2018年8月号「BOOK」より)