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【期待のアーティストに聞く! 】
鈴木光
ベルリン、始まりの10月から

ベルリンを拠点に、ドキュメンタリーの手法を用いて、事実と虚構が混ざり合う映像作品を制作している鈴木光。2018年1月6日から2月4日までKAYOKOYUKIで個展「MONTAGE」を開催する作家に、作品について聞いた。

文=野路千晶

Photo by Mizuki Kin

 映像作家の鈴木光は、ドキュメンタリーの手法をベースに、事実と虚構があざなう映像作品を制作してきた。作品のモチーフは、宗教家である自身の父、役者として活動する2人のドイツ人女性、そして震災で被災地となった故郷の福島県など多種多様だが、いずれの作品にも鈴木の個人史が通底していることに気づかされる。

 2012年からドイツのベルリンを拠点としてきた鈴木。「ベルリンにはたくさんの移民がいて、自分も外国人としてそこに暮らしている。平等性を重視する国民性も相まってコミュニケーションに問題はないのですが、雇用をはじめとした社会的な面では明確な違いがあるんです」。異国の内側から作品を生み出すという試行。しかし5年間のベルリン生活をもってなお、その街のどこにも内在することのない、匿名的な自分の姿に気づいたという。

 KAYOKOYUKIにて1月6日から2月4日まで開催される個展「MONTAGE」では、そうした現在の心境に基づく新作映像作品《October》を発表する。「写真を撮影するような感覚で撮りました」と話す映像には、鈴木が暮らすベルリンの街や、ベルリンから300kmほど離れた港町・ハンブルクの海、道を行き交う大型トラック、様々な人種の人々のポートレイト的なカットが交錯し、わずかに物語性を感じさせる。映像には、観光客でも住民でもない、どこかアノニマスで中庸的な温度が宿り、作家のパーソナルな要素はこれまでとは一転、影を潜めている。

 ドイツの新年度にあたる10月。鈴木にとって作品《October》は、何かの始まりを意味するのか。ドイツでの生活をいったん終え、近く日本へ帰国する予定だという一人の作家の率直な視点が、映像から見えてくる。

 (『美術手帖』2018年1月号「ART NAVI」より)

編集部

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