EXHIBITIONS

御大典記念特別展

よみがえる正倉院宝物

-再現模造にみる天平の技-

2022.04.21 - 06.12

模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(表) 前期(~5月15日)のみ展示 正倉院事務所蔵

模造 螺鈿紫檀五絃琵琶(裏) 前期(~5月15日)のみ展示 正倉院事務所蔵

模造 螺鈿紫檀五絃琵琶の螺鈿に線彫りを施している様子 正倉院事務所提供

正倉院正倉 外観 正倉院事務所提供

 今年4月より再開館する松本市美術館で、御大典記念特別展「よみがえる正倉院宝物 -再現模造にみる天平の技-」が開催される。本展は同館の開館20周年・リニューアルオープン記念ともなる。

 奈良・東大寺の倉であった正倉院正倉に伝えられた、約9000件におよぶ正倉院宝物。その品々は、聖武天皇ゆかりの品をはじめ多くが奈良時代の作で、調度品、楽器、遊戯具、武器・武具、文房具、仏具、文書、染織品など多彩な分野にわたる。

 なかには、西域や唐からもたらされた国際色豊かな品々も含まれるなど、天平文化華やかだった当時の東西交流もうかがい知ることができる。しかし、1300年近くという長い時代を経て今日にいたる正倉院宝物は、きわめて脆弱であるため、毎年秋に奈良で開催される「正倉院展」で一部が展覧される以外はほとんど公開されることはなかった。

 正倉院宝物の模造製作は、明治時代に奈良・東大寺で開催された奈良博覧会を機に始まった。明治時代後半より、宮内省正倉院御物整理掛のもとで、模造製作は修理と一体の事業として取り組まれたが、1972(昭和47)年からは宝物を管理する宮内庁正倉院事務所によって宝物の材料や技法、構造の忠実な再現に重点をおいた模造製作が行われるようになった。以来、人間国宝ら伝統技術保持者の熟練の技と最新の調査・研究成果との融合により、優れた作品が数多く生み出されている。

 本展では、天皇陛下の御即位をはじめとする皇室の御慶事を記念し、正倉院宝物の精巧な再現模造の数々が一堂に会する。

 なかでも見どころの再現模造品は、平成最後の年に8年をかけて完成した《模造 螺鈿紫檀五絃琵琶》(展示期間:4月21日~5月15日)。現代の名工たちが継承した正倉院宝物の特殊な技法や素材、そしてCTスキャンなどの最新技術との融合にも焦点を当てる。

 再現された天平の美と技にふれるとともに、日本の伝統技術を継承することの意義も感じられる展覧会。