EXHIBITIONS

中野信子の「星の時間」

2022.02.04 - 02.19

キービジュアル

 MAHO KUBOTA GALLERYは、脳科学者・中野信子をキュレーターに迎えた展覧会「中野信子の『星の時間』」を開催している(事前予約制)。

 本展は光と闇からなる空間を構成し、鑑賞者の「いま」「ここにある」脳の状態を鑑賞する実験的な試み。来場者には脳の状態を可視化するヘッドバンドを装着してもらい、特別なシステムを通してリアルタイムで測定したデータを、その場の展示空間に映像として投影する。私たち鑑賞者は、人それぞれに色やかたちを変化させていく、脳の動きを鑑賞することとなる。キュレーションを手がけた中野信子は、次のコメントを出している。

「人体を構成する元素のうち、鉄より大きい相対原子質量を持つものは、巨大な恒星の死——超新星爆発を経なければ生成されません。脳を含む私たちの身体は、星の死骸が再構成され、生命を宿したものです。

地球上のほとんどの生物、そして、それらを取り巻く環境に存在する原子は、生成と流転を繰り返し、互いの体を行き来して、エコロジカルシステムの中を循環します。

DNAに保存されている遺伝情報は必ずしも表現型と1対1対応ではなく、環境条件に応じてエピジェネティックな変化を受けます。つまり、物質の循環の中で再構築された<わたし>という現象の固有性の保証は、脳の活動パターンに帰着させられます。

かつてシュテファン・ツヴァイクは人類の歴史の転換点における重要な意思決定の瞬間を、『星の時間』と呼び、一冊の本にまとめました。『星の時間』とは、その先の将来に影響を及ぼすであろう、決定的、歴史的、そして運命的な瞬間のことです。私たちは1日に35000回の選択をします。私たちの存在もまた、「いま」、「ここにある」、<わたし>が生成する『星の時間』の連続体なのです。

本展では、来場者の脳の活動パターンを記録・抽出してNFT化し、一定の時間長をNFTアートとして、来場者本人が購入することができるよう設計しています。表層の意識を惑わす差異と分断を超克して、つながる喜びをほんのわずかの刹那でも、つかむことができるかどうか。自らの脳の活動が露わになる、来場者が試される展示ともなっています(中野信子)」。

 また本展の関連イベントとして、2月5日に中野信子とアーティストのAKI INOMATAを招いたオンライントークイベントを開催し、脳科学の世界から見たアートの可能性について意見を交換を行った。