EXHIBITIONS

平川紀道「human property(alien territory)pt.2 – works in progress」

2022.01.08 - 02.05

平川紀道 sunlight spectrum sonification 2021

  Yutaka Kikutake Galleryは、平川紀道の個展「human property(alien territory)pt.2 – works in progress」を開催する。

 平川は1982年生まれ。2005年多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コース卒業、07年同大学大学院デザイン領域情報デザイン修了。04年よりコンピュータ・プログラミングを用いた映像・音響インスタレーションを中心とした作品群を国内外で発表している。また平川は、池田亮司、大友良英、三上晴子らの作品制作への参加、「Typingmonkeys」としてのライブ・パフォーマンスなど、様々なフィールドで活動を展開。その表現活動は、鑑賞者が「認知」として知りうる人間の身体感覚とは異なる、コンピュータで扱うような論理的な時空間を、「実感」しうる像として実世界にとどめようとする挑戦であるだけでなく、美や崇高といった人間固有の概念を、人間が享受できる範疇を超えて追求する試みでもある。

 平川の作品は「時間」とは、「宇宙」とは、「世界」とは、そして「私」とは何かを問い続ける装置でもあると言う。近年集中的に取り組んできた高次元空間における美をテーマとした映像と音響によるプロジェクト「datum」は、空間、色、時間という異なる概念を、それらが統一された高次元空間において対称的に扱うことで、人間が本来は目にすることのない美を見ようとする作品だった。

 いっぽう、本展で発表される新作(プロトタイプ)は、平川が拠点にする北海道・札幌で、広大な水平に延びる土地を背景に制作され、そこでの作家の関心は、自身が到達できない異次元のものではなく、到達可能な対象へと移行しているようにも見える。

《sunlight spectrum sonification》は、とある海岸で撮影された連続写真と日光のスペクトルの観測データを組み合わせた映像音響作品。もうひとつの《(non)semantic process》は、アイヌの居住地であった白老の海岸で見つけた流木を文字列に変換して、先頭から順に辞書と照らし合わせ、単語を探して文章を生成しようとし続けるプログラムによる作品だ。

  2つの作品には、数理的な変換の普遍性だけでなく、自分(人間)が見ているもの、聞いているものから引き出される「意味」や「価値」は絶えず一面的なものであらざるを得ないということを念頭に、自然現象や物体を観察することを基礎に置いた新たな試みが展開されている。

 出品作のモニターデモ機はEIZO株式会社、スピーカーデモ機はフォステクス カンパニーが提供協力。