EXHIBITIONS

向山喜章「1・8・88」

2021.12.01 - 12.28

©︎ Kisho Mwkaiyama “88 no.1” 2021

 向山喜章の個展「1・8・88(いち・はち・はちはち)」がYutaka Kikutake Galleryで開催。本展は、2019年から開催してきた「11・33」、「22・22」(2020)の2つの展覧会に続き、向山が作品の背景に据えてきた密教的宇宙観を伝える展覧会3部作のひとつに位置づけられる。

 向山は1968年大阪府生まれ、現在は東京を拠点に活動。アーティストとしてのキャリア当初はワックスを素材にした作品で注目を集め、2016年以降は、アクリルメディウムとキャンバスを素材とした絵画作品に集中的に取り組んでいる。色そのものを素材ととらえ、キャンバスに染み込ませるようにして様々な色を幾層にも重ねて完成させるミニマルな絵画作品は、展示環境や時刻とともに様々な色相を見せる極めてユニークな作品として国内外で高い評価を得ている。

 ワックスの作品においては光をいかにしてその作品内部に留め置くのかを試み、キャンバスの作品においては光をいかにして生成するのかを試みてきたが、向山のすべての作品に通底するのは、光という根源的な存在態への絶え間ない探求であったと言えるだろう。

 作家には、幼少期を日本有数の密教の伽藍が立ち並ぶ高野山で過ごし、周囲の静謐な環境やそこに存在する密教美術にふれてきた原体験があり、そして大工として寺院の手入れを行っていた祖父からクラフトマンシップを学んだと言う。独学でその作品世界を切り開き、いかに自身を消して制作に臨むのかということを追求しながら、向山は変化を続ける世界の鏡面となるような作品を発表し続けている。本展で発表される新作たちも、受け継がれたクラフトマンシップと信仰の姿を力強く伝えてくれる。