EXHIBITIONS

康夏奈「宇宙からのもう一つの視点」

展示風景より

展示風景より

 アートフロントギャラリーでは、目の前の自然を自ら体験しながら描き続けたアーティスト・康夏奈(1975〜2020)の特集展示「康夏奈:宇宙からのもう一つの視点」を開催している。

 康夏奈は東京都出身(2016年に吉田から康に姓を変更)。2002年広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科卒業。山に登ったり海に潜ったりという身体的体験を経験をもとに風景を描いた。2020年2月に逝去。

 本展では、康が、幼少期に父と祖母と訪れた韓国・済州島の城山日出峰を描いた《城山日出峰の目眩(ソンサンイルチュルボンのめまい)(東京バージョン)》を展示。康の父方の家族は城山日出峰の位置する済州島の出身だったが、幼い頃に連れて行かれたその場所がどこであったのかは知らなかった。成人して韓国を訪れた際に偶然立ち寄った城山日出峰に立ち、この景色を目前とした時、康自身の過去の記憶や家族の起源が一気に思いめぐらされ、それは目眩のようであったことから、このような題名がついた作品である。本作の画面中央から上側には、康の目の前に広がっていた風景、下側は康の背後にあった風景というように360度のパノラマの視点をひとつの平面作品に描き込んでいる。

 また、展示室には2016年に制作された《だるまさんが転んだ、そして地球になった》も展開。康が、目の前に広がる風景は球体の表面にあるという、宇宙からのもうひとつの視点とともに風景を再解釈して制作した作品となる。

 このほか、康が体験した風景を作品へと凝縮し、3次元の物質性を備えた作品として発表した《海は青い 森は緑》なども紹介。深まる秋の訪れとともに、エネルギーあふれる康の描いた大自然を楽しみたい。