EXHIBITIONS

サーリネンとフィンランドの美しい建築

2021.11.06 - 12.19

ヴィトレスク サーリネン邸のダイニングルーム
Photo : Ilari Järvinen / The Finnish Heritage Agency, 2012

1900年パリ万国博覧会フィンランド館、ラハティ市立博物館

ポホヨラ保険会社ビルディング 中央らせん階段
Photo © Museum of Finnish Architecture / Karina Kurz, 2008

 エリエル・サーリネン(1873〜1950)は、フィンランドのモダニズムの原点を築いた建築家・デザイナー・都市計画家。その展覧会「サーリネンとフィンランドの美しい建築」がいわき市立美術館に巡回する。

 フィンランド出身のサーリネンは、ヘルシンキ工科大学で学び、同級生ゲセリウス、リンドグレンとともに共同建築設計事務所を設立。若くして1900年のパリ万国博覧会フィンランド館の建築を担当し、国内外に名を轟かせた。折しも国家の独立を求めるフィンランドでは、民族性と独自の文化的価値の再発見を目指す総合的な文化運動「ナショナル・ロマンティシズム」が台頭していた。サーリネンらの花崗岩を用いた建築と、民族叙事詩『カレワラ』に由来する装飾モチーフはフィンランドを象徴する様式として支持された。

 なかでもサーリネンらのキャリアを通じて重要な役割を担ったのが、住宅建築である。家具やテキスタイル、色彩豊かな室内透視図からは、内装を含めた総合芸術として住宅をデザインしていたことがうかがわれ、自分たちの事務所兼共同生活の場として郊外の湖畔に建設したヴィトレスクは、その代表的な住宅建築だ。

 やがて駅や都市のデザインへと活動を広げるなかで、サーリネンは同僚たちと袂を分かち、独自のモダニズムを追求。そして1922年にシカゴ・トリビューン本社ビルの設計競技で二等を獲得すると、翌年アメリカに移住し、自ら設計したクランブルック美術アカデミーで教鞭を執ったほか、同じく建築家となった息子のエーロ・サーリネンと建築事務所を設立し、ともに設計に励んだ。

 本展では、サーリネンのフィンランド時代に焦点を合わせ、図面、スケッチ、家具のデザインを通してその功績をたどる。椅子から建築、都市計画に至るまで、つねに人々の生活に寄り添ったデザインを希求したサーリネンの仕事は、生活様式の急変を余儀なくされた私たちに、いまも変わらない価値を提示してくれるだろう。