EXHIBITIONS

原瑠璃彦+YCAM共同研究成果展示

Incomplete Niwa Archives—終らない庭のアーカイヴ

3Dスキャンされた常栄寺庭園

展覧会場のイメージ

 山口情報芸術センター[YCAM]は、原瑠璃彦+YCAM共同研究成果展示「Incomplete Niwa Archives—終らない庭のアーカイヴ」を開催する。メディア・テクノロジーを用いて制作された山口市の常栄寺 庭園(通称:雪舟庭)のアーカイヴを体験できる展覧会。

 日本庭園は、海外からも注目度の高い重要な文化資源であり、いま、アートや建築といった様々な場面で再注目されている。YCAMは2019年度から日本庭園研究者の原瑠璃彦(はら・るりひこ)とともに、日本庭園の新しいアーカイヴを研究開発する「庭園アーカイヴ・プロジェクト」を実施し、本展はその成果のひとつだ。

 原瑠璃彦は1988年生まれ。静岡大学専任講師。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。日本の庭園、能・狂言をキーワードに著書をまとめるほか、パフォーマンスや展覧会などの創作の現場に関わる活動として、坂本龍一+野村萬斎+高谷史郎による能楽コラボレーション「LIFE-WELL」(2013)、ムン・キョンウォン+YCAM「プロミス・パーク― 未来のパターンへのイマジネーション」展(2015)に参加している。

 本展では、日本庭園を3Dスキャンなどの映像技術や立体音響、バイオ・テクノロジーなどを駆使して収集した日本庭園の様々なデータをもとに、庭のアーカイヴそのものを庭のように体験できるインスタレーション作品を発表する。

 アーカイヴにあたっては、京都工芸繊維大学のプラットフォーム・KYOTO Design Labの協力を得て、高精度の3Dスキャンを実施。そのほか高解像度写真/映像、立体音響、DNA解析といった現代的なテクノロジーを活用し、これまでにないアプローチから庭園の様々な要素をデータ化すると同時に、専門家へのインタビューなども行った。

 一般的に日本庭園は、石や水、土や植物、建築物によって構成されているため、造営された時点で完成せず、絶えず変化を続けている。だからこそ庭をアーカイヴするという試みもまた永久に完成のないものとなる。こうした原理的に困難な挑戦に取り組むことで、日本庭園の本質・特性を見出すこともこのプロジェクトのねらいだ。

 展覧会のオープンと同時に、プロジェクトの過程で集めた様々なデータを閲覧するためのウェブサイトも公開。
ウェブサイトでは、研究対象となった3つの庭園を3DCGで再現したデータを閲覧できる。この3DCGでできた仮想的な庭園内には、各所に静止画、映像、サウンド、テキストなどが埋め込められており、ユーザーは庭園内を仮想的に移動しながら、実際の庭園を歩くことでは知り得なかったデータを参照することができる。

 なお本展は、山口市をはじめとする山口県央連携都市圏域で催される「山口ゆめ回廊博覧会」の一環として開催される。