EXHIBITIONS

塔本シスコ展 シスコ・パラダイス

かかずにはいられない! 人生絵日記

2021.09.04 - 11.07

塔本シスコ もらったラン、もらったシクラメン 1996 個人蔵

塔本シスコ 絵を描く私 1993 個人蔵

塔本シスコ モチつきをするウサギとススキ 1998 個人蔵 撮影=上野則宏

 50代から独学で油絵を始め、自宅の四畳半の一室をアトリエに、自由奔放に描いた塔本シスコ(1913〜2005)。その画業を本格的に振り返る展覧会「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない! 人生絵日記」が世田谷美術館で初開催される。

 塔本シスコは1913(大正2)年、現在の熊本県八代(やつしろ)市生まれ。養父・傳八は自身のサンフランシスコ行きの夢を託し、長女をシスコと命名した。33年、シスコは20歳の時に塔本末藏と結婚。ウサギやチャボなどを飼い、愛育していた。その後、一男一女を得て一緒にスケッチをし、またスズムシ、金魚などを飼う日々を過ごした。

 59年に夫が急逝。シスコ自身も体調不良のために静養の日々が続き、48歳の時には脳溢血に倒れ、このリハビリテーションのために、石を彫りを始めると、53歳のある日から、大きなキャンバスに油絵を描くようになった。70年には、長男で画家の賢一と同居するために、大阪に移住。制作はますます旺盛さを増し、シスコの何ものにもとらわれない自由な絵画世界には、植物や愛育している金魚など身のまわりのもの、またしばしば子供の頃の想い出もモチーフとなって現れ、散歩でよく会う名もしらぬ人までが登場するようになった。

 2001年の貧血で倒れたことをきっかけに、認知症を発症したシスコ。しかし「私は死ぬまで絵ば描きましょうたい」と、亡くなる前年まで自身の喜びと夢を制作の源泉に制作は続け、05年に91歳の人生を閉じた。

 本展は、これまであまり広く紹介される機会のなかったシスコの作品を集め、かつてない規模で展示。ありのままに、自分らしく描き続けたシスコの人生をたどりながら、初期〜晩年までの作品約200点によってその自由な創作の世界を紹介する。