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EXHIBITIONS

会田誠展「愛国が止まらない」

会田誠 梅干し 2021 撮影=宮島径 © AIDA Makoto Courtesy of Mizuma Art Gallery

会田誠 MONUMENT FOR NOTHING V〜にほんのまつり〜 2019
「Oh!マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」(兵庫県立美術館、2019)での展示風景より
© AIDA Makoto Courtesy of Mizuma Art Gallery

 会田誠がミヅマアートギャラリーでは5年ぶりとなる個展「愛国が止まらない」を開催する。本展は当初、2020年夏に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックにあわせ企画されたもの。それぞれ制作動機は異なりつつ、「食」を契機にした点では共通する、日本への断ちがたい会田の思いを題材とした3作品が一同に会する。

 会田はデビュー以来ほぼ一貫して、日本文化や日本社会をテーマにしてきた。ギャラリーのスペースを大きく占有するのは「MONUMENT FOR NOTHING」シリーズの5作目《MONUMENT FOR NOTHING V〜にほんのまつり〜》だ。

 2019年、兵庫県立美術館で開催された「Oh!マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」展に参加した会田は、「日本における英雄と庶民の関係性」という一風変わったテーマを担当学芸員の小林公から与えられ、《MONUMENT FOR NOTHING V〜にほんのまつり〜》を制作した。兵站の軽視により飢餓に直面することが多かった旧日本軍の兵士がモチーフに、素材や技法は青森のねぶたを参考としてつくられた同作品は、東京では初公開となる。

 また本展では加えて、巨大な日本兵の亡霊が見下ろすギャラリーの壁に、新作の絵画シリーズ「梅干し」を展示する。

 会田は高橋由一の《豆腐》(1877)を「日本で最初にして最良の油絵」と公言しており、「梅干し」はそれを念頭に置いて制作された、油絵具による写生画。美術家としての会田は、いまこのタイミングで日本の近代の始まりにもう一度真摯に遡行してみることの必要性を感じるという。この小さな絵画シリーズは抽象と具象という両極にありつつ、絵画の純粋な実験性において16年の個展で発表した「ランチボックス・ペインティング」シリーズと対になるものとも言える。

 そして個展の会期が1年延期されたことで取り組んだ、「漬物」を題材にしたコンセプチュアルなもうひとつの新作を発表。国際的な政治性を笑いで表現している点では《The video of a man calling himself Japan’s Prime Minister making a speech at an international assembly(国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ)》などの延長線上にある作品となる。

 制作の経緯には、中国、日本、韓国、北朝鮮の4ヶ国の作家が参加するグループ展が昨年、韓国・済州島で企画されていたことがある。北東アジアの平和のためにアートがどのような役割を果たすのかをテーマに掲げた展覧会で、会田は極めて政治的なパフォーマンス作品での参加を予定していたが、コロナ禍で渡航が難しく代案として今作を手がけた。しかし新型コロナウイルスの感染状況で展覧会は再び延期となったため、本展でこの作品を発表する。タイトルに冠した「愛国が止まらない」というタイトルは会田の真情なのか、それともアイロニーなのか、作品を前に一考してみてほしい。