EXHIBITIONS

海野林太郎個展「What You See is What You Get」

2021.06.11 - 07.04

キービジュアル

海野林太郎 参考画像

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 海野林太郎の個展「What You See is What You Get」がEUKARYOTEで開催中。本展では、すべて新作となる3つの映像作品のほか、写真やドローイング、粘土の立体を交えたインスタレーションを展示している。7月4日まで。

 海野は1992年東京都生まれ。2018年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻を修了。アーティスト・コレクティブ「カタルシスの岸辺」のメンバーとしても活動している。

 主な個展のひとつである「風景の反撃 / 執着的探訪」(トーキョーアートアンドスペース本郷、2019)で発表した作品では、カメラを固定した自身の身体をコントロールし、一人称視点のヴィデオゲーム映像をモチーフに街中を撮影する、あるいは同じ方法で撮影した野焼きの風景を、ドローンからの空撮映像を交えることによって、平穏な日常と戦場ゲームの惨禍の光景とを曖昧にさせるなど、私たちが目にする景色の実在性を揺らがせ、世界の重層性を引き出す手法で注目を集めた。

 昨年、世界中を覆った新型コロナウイルス感染拡大の影響により、従来の作家活動は制限を受け、海野自身もパンデミックによる世界的混乱から日常の中でふとした瞬間に「死」について考えことが増えた。

 その過程で、以前より身近に感じるようになった「死」というものをいかに超えていくことが可能かということに関心を持ち、「コメディ」という手法に興味を持つようになったと話す。それは本展へ向けた制作手法にも反映されている。固定カメラを使用した撮影であったり、バスター・キートンなどの映画における古典的シーンの引用であったり、近年取り組んできたゲーム的一人称視点の様式から変化と実験を及ぼした。例えば映像作品「ハウス」の一見戯画化された場面においては、フィクションという約束のうえで得られる死に対する忘却と、リアルな死の可能性といった表裏一体性を含んでおり、死を超克するしなやかさとともに倒錯した感覚を鑑賞者に与える。

 展覧会のタイトル「What You See is What You Get」は、「それ以上でもそれ以下でもない、見たまま」という意味。海野は、多様な情報が氾濫する現在において、あらゆる意味で「見たまま」であることは難しく、直訳すると「見えるものは得られるもの」という言葉にも示唆を感じると話している。