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甫木元空 個展「その次の季節」

甫木元空 その次の季節 2021

甫木元空 顔 2021 インスタレーション・ビュー

甫木元空 その次の季節 2021

甫木元空 その次の季節 2021

甫木元空 その次の季節 2021

甫木元空 その次の季節 2021

 高知県四万十町在住の映画作家・甫木元空 (ほきもと・そら)の個展「その次の季節」が、すさきまちかどギャラリー / 旧三浦邸で開催される。

 甫木元は1992年埼玉県生まれ。多摩美術大学映像演劇学科を卒業し、映画による表現をベースに、音楽制作やライブ演奏パフォーマンスなど、ジャンルにとらわれない横断的な活動を続けている。手がけた映画に、2014年の『終わりのない歌』や全国劇場公開された16年の『はるねこ』などがある。MV制作や音楽活動も行い、19年に4人組バンド「Bialystocks」を結成、ボーカルや作詞を担当。20年には、須崎市のアート事業「現代地方譚8 おちこちのひびき」の総合ディレクターを務めた。

 自身の個人的な記憶や身体的感覚を手がかりに、映画や音楽の領域を自由に行き来して表現活動を展開してきた甫木元が、本展では、「ビキニ事件」と呼ばれる核被災事件を取り上げ、高知在住の関係者に取材した新作を発表する。

 1954年、マーシャル諸島ビキニ環礁で行われた米国の水爆実験で発生した放射性降下物は、近隣海域で操業していた日本のマグロ漁船に降り注ぎ、広島と長崎に次ぐ新たな被曝者を生み出した。

 生活のために過酷な労働環境のマグロ漁船に乗り込んで被曝し、様々な理不尽を負わされてきた元漁師やその家族たち。甫木元は取材を進めて状況を咀嚼するなかで、事件前後の壮絶な日々を語る人々の姿に、日本の戦争責任を訴え、負の歴史の忘却に抗った須崎市出身の詩人・大崎二郎(1928〜2017)の姿を重ねるようになったという。

 本展では、大正時代の商家建築である、すさきまちかどギャラリーの特徴的な空間を活かし、作家にとって初の試みとなるマルチチャンネルの映像インスタレーションを公開。甫木元は過去を語る関係者の姿に複数の異なる文脈を有機的に接続し、これまでにない角度から事件にまつわる人々の記憶に光を当てることを試みる。

 大崎の詩集タイトルから引用した「その次の季節」という展覧会名には、現在を生きる作家の、過去の世代が体験した歴史を受け継ごうとする意思が込められている。

 本展キュレーションは、塚本麻莉(高知県立美術館学芸員)。作品の音楽を担当するのは、ミュージシャンとして数々のアルバムをリリースするほか、坂本龍一をはじめ名だたるアーティストとコラボレーションを重ねてきたCorey Fuller、そして会場の音響設計は、商業施設から展覧会まで、多岐にわたる分野で実績を持つ WHITELIGHTが手がける。