EXHIBITIONS

權寧禹(クォン・ヨンウ)

2021.04.03 - 05.22

權寧禹 Untitled 1987 © Estate of Kwon Young-woo

 単色画の重要作家のひとり、權寧禹(クォン・ヨンウ、1926〜2013)の日本初個展がBLUM & POE 東京で開催される。

「単色画(ダンセッファ)」は1970年代に台頭した、韓国のモノクロームペインティングの動向。クォンは60年代に自らが学んできた伝統的な水墨画から距離を置き、繊細で複層的な韓紙(ハンジ)と呼ばれる紙の表面を爪で引っ掻き、あるいは引き裂くという制作手法にいち早く取り組み始めた。

 水墨画におけるインクや筆がそうあるように、クォンは紙を唯一の「道具」、そして「手法」として用いた。数々の手法によって紙と絵画の素材を巧みに操り、メディウムの既存の表現を問うた単色画の作家たちの、先例なき作品様式や実験性は、のちに世界に広く知られることとなる。

 クォンは、日本では65年の東京ビエンナーレ、75年に東京画廊で開催された「韓国・五人の作家 五つのヒンセク<白>」といった重要な展覧会に参加。78年にはフランス政府の助成を受けパリへと拠点を移し、約20年間を同地で過ごした。フランスでは、支持体の裏側から穴を開けた作品やびりびりと引き裂かれた縦長の痕跡を持った作品をはじめ、筆の持ち手、千枚通し、ハサミといった道具で紙に穴をうがっていく新たな試みにも挑んだ。

 近年ではクォンの作品は、2017年にBlum & Poe 東京が、紙という素材の属性を探求する作家を取り上げたグループ展「Systemic Paper」で、内藤楽子、ドロシア・ロックバーンの作品とともに展示された。同年、東京オペラシティ アートギャラリーで戦後の韓国美術を検証した展覧会「単色のリズム 韓国の抽象」でも、クォンの白を基調とした作品が紹介された。

 支持体が持つ卓越性を強調したオールオーバーなコンポジションとともに、絵画の新しい方向性を築いたクォン。本展では、日本ではこれまで紹介されてこなかったクォンの、インクによる実験への回帰を表す制作後期の作品群が一堂に会する。