広重と巡る「名所江戸百景」

「名所江戸百景」は、名所絵第一人者として名を馳せた歌川広重の最晩年の代表作。川崎浮世絵ギャラリーで開催中の「広重と巡る『名所江戸百景』」展では、広重が描いた118図に二代広重による1図と目録を加えた全120図を、目録に沿って、前後期に分けすべて展観する（前期は終了）。

　浮世絵版画のシリーズとしては最大規模といわれる100図を超える作品を、還暦を迎えた死の直前まで描き続けた広重。広重の集大成と言える「名所江戸百景」では、全図が縦長の画面に遠近法が駆使され、近景が極端に大きく描かれるなど、様々な工夫が見られる。また彫りや摺りにも高度な技術が施され、図を通して当時の江戸の空気までもを細やかに感じ取れる点が、同シリーズの大きな魅力となっている。

　ポスト印象派の画家　フィンセント・ファン・ゴッホも影響を受け模倣したという「名所江戸百景」。ヨーロッパの画家たちにも愛された作品の数々とともに、本展の後期では、同時代を描いた絵師たちの作品なども合わせて紹介している。