EXHIBITIONS

加藤愛(愛☆まどんな)展「ひあたりのわるいへや」

加藤愛(愛☆まどんな) 彼女の顔が思い出せない−!− 2020 撮影=宮島径 © KATO Ai(AI☆MADONNA) Courtesy of Mizuma Art Gallery

「美少女」を自分の感情を代弁するモチーフとして描き続けるアーティスト・加藤愛(愛☆まどんな)の個展が、ミヅマアートギャラリーで開催される。

 1984年東京都生まれの加藤は、2004年に美学校で会田誠のバラバラアートクラスを卒業し、07年より「愛☆まどんな」の名でライブペインティングのパフォーマンスを開始。作品の展示のみならず、ミュージシャンとのコラボレーションやアイドルの衣装デザインを手がけるなど、その活動は多岐におよぶ。19年には自身初のマンガ『白亜』(株式会社STOKE)を出版し、ますます表現の幅を広げている。

 加藤の制作のベースとなっているのは、幼少期の記憶。幼い頃に惹かれた少女たちの体は、憧れか性的か、いまだ曖昧な境界線に存在しながらも、加藤のなかに鮮烈な記憶として留まり続けている。そんな女神のような存在でもある「美少女」を、加藤はコンプレックスとストレスに陥った少女時代に、自分自身を応援するために描き始めたという。

 本展は、キャンバス全体に女の子の顔を描くシリーズ「彼女の顔が思い出せない」を中心に構成。「彼女の顔が思い出せない」シリーズは、「目を閉じると自分がどんな顔をしていたか思い出せない」など、自分の顔をどこか遠くに感じた体験をきっかけに、いまの自分と向き合う「今顏」を残すため、2014年より制作が開始された。それから6年が経ち、同シリーズが自身の代表作と呼べるようになった現在も、加藤は当初と変わらない思いで、その時にしか描けない顔を描くため、いまこの瞬間の自分と向き合い続けている。

 本展に向けて制作されたシリーズ最大サイズの《彼女の顔が思い出せない》は、「見えない敵」 が横行する不安で憂鬱な雰囲気ともリンクさせ、青色のみで描き切った新作。展覧会タイトルの「ひあたりのわるいへや」は、新型コロナウイルス感染症の影響で開催中止となったアートフェア東京2020にて、展示予定だった作品が行き場をなくして部屋の片隅に置かれている姿が、いまの情勢を表しているように思えたことからつけられた。