EXHIBITIONS

磯谷博史「5つの印象」

2020.02.01 - 03.29

展示風景

 様々な素材と形式を行き来する作品で、多層的な出来事をつくり出すアーティスト・磯谷博史。磯谷は、彫刻、写真、ドローイング、それら相互の関わりを通して、認識の一貫性や統合的な時間感覚を再考してきた。

 近年は写真を媒介に時間と事物の関係を扱い、ポンピドゥー・センター(パリ)主催のコレクション展「The Specter of Surrealism」(2017) や森美術館(東京)の「六本木クロッシング 2019 展:つないでみる」(2019)、ポーラ美術館(神奈川)での「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展(2019) などに出展。国内外で活動の場を広げている。

 本展では、5つの円が描かれた手のひらを撮影した写真と絵具で構成され、オリンピックの期間と場所に重なった、ある展覧会を告知する2枚のポスターを展示。手のひらの円は、過去にオリンピックを開催した国々の硬貨を肌に押しつけ、充血させることで視覚化された。写真はセピアカラーに置き換えられ、かつてそこにあった充血の色がペイントされている。

 ポスターに記載された情報は近い将来起こる出来事の告知。いっぽう、写真はやがて消える肌の刻印を写した過去の記録であり、事後的にペイントされた絵具は現在を強調するしるしとしてとらえることができる。

 「『展覧会の告知』の展覧会」という構造を持つ本展は、CAGE GALLERYにおける会期と告知される会期とのあいだにずれを生むなど、様々な方法で複数の時間が織り込まれた場となる。