EXHIBITIONS

大久保あり「パンに石を入れた17の理由」

大久保あり Pain de campagne au des pierres | 石入りカンパーニュ 2019

 3331 ART FAIR 2019でレコメンドアーティストに選出された、大久保ありによる個展が開催されている。

 大久保は自身の経験や空想をもとに物語を紡ぎ、それにまつわる絵画、オブジェ、テキストなどをインスタレーションとして構成する。金属、石、写真、平面や立体による展示空間とともに示された物語は、日々の出来事や自身の手によるオブジェクトと向き合う作家の冷静な眼差しを通し、それらがその場に据え置かれるまでのいきさつを想像させる。

 昨年の3331 ART FAIR 2019で大久保は、会場内に作業小屋を建て、石板にラブレターを彫り拓本を採る作品《石の手紙》を展開。「逡巡やエラー、手間や労働や移動を経て、伝達するまでの時間が限りなく永遠に近づくくらいに延長されて、その目的がもはや見失われたり、忘却されてしまったりすること」をテーマとするこの作品は、同年にNADiff Window Galleryで開催した展覧会でも「Love Letters」シリーズとして発表され、現在も継続的に制作されている。

 本展では、2013年の個展「パンに石を入れた17の理由」(switch point、東京)で発表された作品のリニューアル・インスタレーションを展示。パンに石を入れた理由が架空のファミリーヒストリーと会場での鑑賞者の実際の体験によって解き明かされる。

 また、今回は18年よりグラフィックデザイナーの小池俊起と着手した自作を書籍化するプロジェクト『Undocumented』の第3作目として、エディションボックス型の書籍を刊行。会期中、小池と芸術学研究者の上崎千をそれぞれ迎えたギャラリートークも行われる。