EXHIBITIONS

日本、家の列島

―フランス人建築家が驚くニッポンの住宅デザイン―

河内一泰 ハウスkn 2006 撮影=ジェレミ・ステラ

ジェレミ・ステラ 妹島和世 / 梅林の家 2010.9.2

坂茂 羽根木公園の家―景色の道 2011 撮影=ジェレミ・ステラ

 本展は、日本の近現代の住宅建築にスポットをあて、2014年5月からフランス、スイス、ベルギー、オランダの各都市を好評巡回した展覧会「日本、家の列島」(L’archipel de la maison)の帰国展。

 企画を実現させたのは写真家のジェレミ・ステラに加え、建築家のヴェロニック・ウルスとファビアン・モデュイ、日本在住30年で建築設計事務所みかんぐみの共同代表であるマニュエル・タルディッツの4人のフランス人。日本通の彼らの複眼的な視点でとらえた日本の住宅建築の評価という点に本展の大きな特徴がある。

 日本列島の地理および自然条件をはじめ、経済、産業、技術、社会、文化における日本固有の状況のなかから、日本の住宅建築は世界的に類を見ない発展をとげてきたといえる。4人は、現在活躍中の若手および実力派の建築家たちによる住宅作品を中心に、約70件の秀作を独自の基準に基づいて選び出した。

 展示は、「昨日の家」「東京の家」「今の家」の3部で構成。それぞれ多数の魅力的な写真と映像、図面、建築家と施主へのインタビューといった内容に加え、ヨーロッパ巡回展にはなかった模型とスケッチも加わり、その魅力をあますことなく紹介していく。彼らに見出された、「日本らしさ」「日本の家の本質」「伝統」の精神は、日本人にあらためて多くのことを気づかせてくれることだろう。さらに、ゲストアーティストに都市における生活と思考のあり方を模索し、「貯水タンクに棲む」プロジェクトや「0円ハウス」といったラディカルな作品を発表し続けている坂口恭平を迎え、ドローイングを展示し、公開制作を行った。

 都市の魅力を考えていくことが可及的課題となっている現在、本展は多くの示唆を与えてくれる展覧会となるだろう。