EXHIBITIONS

北川健次

黒の装置―記憶のディスタンス

北川健次 肖像考― Face of Rimbaud(版画集〈反対称/鏡/蝶番― 夢の通路 Véro-Dodat を通り抜ける試み〉より) 2004

北川健次 肖像考― Face of Rimbaud(版画集〈反対称/鏡/蝶番― 夢の通路 Véro-Dodat を通り抜ける試み〉より) 2004

北川健次 Diary I 1974

北川健次 F・カフカ高等学校初学年時代 1987

 1970年代に銅版画家として作家活動を開始し、写真製版によるエッチング(フォトグラビュール)を主な技法として、独特の緊張感や高い精神性をまとう作品をつくり出してきた北川健次。詩的想像力(ポエジー)と銅板という金属とのせめぎあいのなかから立ち上がってきたかのような、濃密かつ硬質な画面は、駒井哲郎や棟方志功、池田満寿夫といった日本を代表する版画家たちの称賛を早くから受け、作家の名を広く世に知らしめた。

 その後、北川は版画制作からいったん距離を置き、「ポエジーの形象化」ともいうべき方法論を新たなメディアを通してより先鋭化するため、80年代はオブジェ、90年代ではコラージュ、2000年代から写真といった表現領域を切り拓く。さらには、美術作品にとどまらず詩作や評論にいたるまで、活動の領域を広げる。

 90年代半ばからは再び版画に本格的に取り組み、作品集の形式を中心に旺盛な制作。卓越した技巧によりイメージの濃密さや強度をいっそう増した、「二次元のオブジェ」ともいうべき相貌の作品は、銅版画の新たな境地を示すものとなり、2008年にフランスで開催されたアルチュール・ランボーを主題とした展覧会にピカソ、ミロ、ジャコメッティ、ジム・ダインらとともに日本人作家として唯一選出されるなど、国際的にも高い評価を得た。

 本展では、北川の硬質に輝く多面体のような創作のなかから、その原点である銅版画を中心に、近年のオブジェを加えた代表作を展示。様々なメディアを横断し、鑑賞者の記憶表象や想像力を喚起する「装置」として作品をとらえる思想で、多面体的宇宙を形成してきた作家の世界観を紹介する。