成島麻世「肖像と皮膚のあいだ」

　隙間で成島麻世による「肖像と皮膚のあいだ」が開催される。

　成島麻世は、この世界に存在する特定のイメージを、触知可能な物質として再構築する彫刻家だ。人間の認知の境界を探るように、身の回りにある不可視の題材を文字通り「掘り起こす」成島の制作は、世界をいかに知覚し、それをどのように記録するべきかという、探究のプロセスとして捉えることができる。

　本展「肖像と皮膚のあいだ」で成島は、「指紋」をめぐる木彫の新作群を発表する。実在する人間の指紋を採取した成島は、その線を丁寧に掘り起こし、彫刻として定着させた。木の中に複製された指紋は、彫刻家の手によって隆起と陰影が与えられ、匿名性と固有性を孕んだ新たな刻印へと置き換えられている。空間には実際に手で触ることのできるガラス球のオブジェクトを配置。触れるたび残される指紋は他者の痕跡の上に静かに重なる。