EXHIBITIONS

崔潔(Cui Jie)、Haburi、中村直人、寺本明志「no man's land」

2025.02.14 - 03.09

展示風景

 SOM GALLERYで、侯米蘭(Hou Milan)がキュレーションを手がける展覧会「no man's land」が開催されている。

 本展は、官僚制的に構築されている都市の建築空間と個人との関係性に着目し、それぞれ独自のアプローチで制作を行う4名の作家を紹介。出展作家は、崔潔(Cui Jie)、Haburi、中村直人、寺本明志。

 崔潔(Cui Jie)の作品に描かれる都市の光景は、作家自身の個人的な経験と結びついており、中国のプロパガンダ・アートの思想、ソビエト共産主義の美学、日本のメタボリズム建築運動など幅広い影響が見て取れる。

 内モンゴル出身のHaburiは、異なる文化的背景や歴史的物語を内省的に掘り下げながら、地域性がある手工芸を学び、特定のアイテムを再解釈するかたちで編み出している。身近にある記号に内包されたメッセージを探り、アイデンティティが持つ政治的な意味を鋭く提示する。

 中村直人は、インスタレーション、写真、映像、小説など多様なメディアを駆使し、物質性、建築的構造、言語の遊戯性、映像とナラティブの融合といった要素を組みあわせながら、日常的な物や空間に対する詩的な解釈を通じて、生まれながらにして蓄えられる観念を疑うアプローチが特徴となっている。

 寺本明志のペインティングには「Patio(中庭)」という世界観が一貫している。これは、内と外の境界が曖昧な空間として、静物、人物、風景といった異なる要素が等価に共存する空間を創出するというもの。近年は、災害、戦争などの社会的な問題を個人のスケールでどのように向きあうかという問題意識にも焦点をあてている。

 本展は「no man's land」という概念を通じて、統制の場としての都市建築に対し、アーティストたちがどのように個人的な経験や解釈を介入させるか、個人の記憶と都市発展に宿る政治性を多角的に考察する試みとなっている。