武田陽介「Singinʼ in the Rain」

　KOSAKU KANECHIKAで、武田陽介による個展「Singinʼ in the Rain」が開催されている。

　武⽥は、写真というメディウムの可能性を追求し続けてきた。代表作である「Digital Flare」シリーズは、デジタルカメラを強い光に向けた際に⽣じるフレアという現象をとらえている。その光とは、カメラのシステムがとらえた純粋な被写体ではなく、その被写体とシステムの関係性から⽣じ、カメラフレームの内部に溢れた光であり、それを作品化することを武⽥は「⼿段の形跡、存在の刻印」と表現。

　写真において、被写体はカメラシステムの外部にあり、客観化され、カメラはそれを写しとる、という前提を相対化している。「⼿段（カメラ）と⽬的（被写体）の錯綜した関係性」を被写体とする武⽥のコンセプトは、写真の歴史においてこれまでに⾏われてきた様々な実験に連なるものであるだけではなく、強度があり、凝縮された作品を⽣み出している。

　新シリーズ「Singinʼ in the Rain」では、結露した⽔滴をモチーフとしている。起点とする1作品のほかは、様々な条件（カメラの機種、レンズの種類、露光時間、カメラの動かし⽅など）を次々と変化させながら、延々と撮影を繰り返して現像されたものだ。その膨⼤なイメージのなかからセレクトされた新作群には、驚くほど多様で豊かな濃淡と⾊彩を持った光とテクスチャーが定着。

　本展では、「Singinʼ in the Rain」シリーズの新作17点が展⽰されている。