EXHIBITIONS

伊藤誠、益永梢子、佐々木耕太、長田奈緒、堀田ゆうか「パターンと距離」

2024.07.06 - 08.04

伊藤誠 青空 2017 亜鉛鉄板、油彩 60 × 72 × 3 cm

益永梢子 Session1 2023 木製パネル、キャンバス、アクリル絵の具、鉛筆 38.5 × 46 cm

佐々木耕太 Untitled 2024 キャンバスに油彩 33.3 × 24.2 cm

長田奈緒 Surface Preparation(Sandpaper 3M) 2024 シルクスクリーン、真鍮 各 6.0 × 4.5 × 2.0 cm

堀田ゆうか C-144 2024 アクリル、鉛筆、ジェッソ、木製パネル 29.7 × 21 × 2 cm

 Maki Fine Artsで、伊藤誠、益永梢子、佐々木耕太、長田奈緒、堀田ゆうかによる展覧会「パターンと距離」が開催されている。

 伊藤誠の、様々な素材を用いた立体作品は、フォーマルでありながら軽やかでユーモアがあり、同時代の彫刻の可能性を体現。《青空》(2017)は、ある地点から見える遠景をモチーフに、至近距離で触れるものとして表現した作品のひとつだ。この作品は、遠くに見える送電線に取り付けられている鳥害防止器具を写真撮影したものをモチーフとしており、実際の風景の縮図を、彫刻として変換された場合の距離の尺度で表出している。本展では、《青空》に加え、新作も発表予定だ。

 益永梢子は、絵画を起点として多様な手法により作品を制作してきた。周囲の環境・空間との関係性を重視する作品群は可変的で置換可能な性質を持つ。《Session》(2023)は、いくつかのシェイプト・キャンバスによる組み合わせにより形成。隣りあう作品と呼応するかのように、色彩や線、パターンが柔らかにつながりあい、豊かな関係を紡いでいく造形がなされている。

 佐々木耕太は、3DCGを用いて、アトリエやギャラリーなどの空間を描くなど、2Dと3Dを交差するペインティング作品を制作。《Untitled》は、絵具の厚みでできた画面の上から、ストライプのパターンを描いた作品だ。パターン(2次元)を、凹凸に形成された支持体(3次元)へと描き込まれ、見る角度により視覚的な揺らぎが生まれる。イメージが圧縮されたようなイリュージョンを画面に与え、観者に「見ること」を意識させるだろう。

 長田奈緒は、身近にあるものの表面の要素を、シルクスクリーンを用いて、実際とは異なる素材の表面に刷った作品を制作。紙やすりを題材とした《Surface Preparation(Sandpaper 3M)》は、その表面と裏面のイメージが同型の真鍮に刷られており、2つの作品が重なりあう構造になっている。長田の作品は、日常で廃棄されていく些細なものに「はかなさ」を見出し、繊細で詩的な存在へと昇華。観者にささやかな気づきを促し、その現実観を揺るがす。

 堀田ゆうかは、絵画を起点とし、ドローイングやインスタレーションを軸に制作。近作では版表現を作品に組み込むなど、様々なメディアを介したドローイングも試みている。「C」と名付けられた作品シリーズは、身体的感覚によって描かれた手探りの行為の痕跡だ。自由自在で開放的なストロークは、生気を伴った感覚を頼りに描かれ、呼吸を感じさせるようなイメージが表出される。