EXHIBITIONS

イライジャ・ゴーウィン「The Last Firefly」

2024.06.05 - 07.20

Violet Catching Firefly, Danville, VA © Elijah Gowin

 PGIで、イライジャ・ゴーウィンによる個展「The Last Firefly」が開催される。

 イライジャ・ゴーウィンは、1994年から写真家としてのキャリアを歩み始めた。牧師の祖父と写真家の父を持ち、母の実家であるバージニア州の古い農家に育ったゴーウィンは、幼年期に培った感性で、信仰や儀式、風景、記憶をモチーフに、自らの原点を探り出す術を写真に見出す。

 モノクロームの情感豊かなデビュー作「Hymnal of Dreams」(1994)を発表後、サイアノタイプやフォトグラム、ピグメントプリントなど、それぞれのシリーズに適した手法を選びながら、世界の複雑さに向きあい、写真で表現。大学で教鞭をとりながら、2008年には自らの出版社、Tin Roof Pressを設立。写真集やジンを出版するだけでなく、図書館と独立系の出版社をつなげ、サポートを行うなど、精力的な活動を展開している。

 近年は、幼年期の物語からいまという時代に目を向け、環境や社会の変化、それらがもたらす問題提起に関心を寄せており、例えば、射的ゲームと若者のポートレイトによる「Shooting Star, Inc.」では、気候変動が常態化した世界で起こる暴力的な文化戦争、学校での銃乱射事件による若者の不安を見つめ、希望がいかにして生き残ることができるのかを問うている。

 本作「The Last Firefly」は、ゴーウィンの娘たちが捕まえてきた蛍の光で気まぐれにつくったフォトグラムがきっかけとなる。最初の一年はいくつかのフォトグラムを制作、抽象的な蛍の軌跡は、「最初は抽象的だったが、次第にメッセージを発する暗号のような形が浮かび上がってきた。(中略)ほとんどは漆黒の宇宙に浮かぶ星のようになり、無限に大きかった」と語っている。

 その後、様々な調査を経て、蛍の個体数減少に影響を与えている生態系や風景の変化を学び、アメリカだけでなく、アジアまで足を伸ばして撮影。そうしたなかで、ゴーウィンは経済的な変化がもたらす風景の変化を目の当たりにする。「自然とテクノロジー、そして私たちが同時に生きるこの世界が、複雑な相関関係の上位にあることを表現したいと考えている」と語っており、社会的なランドスケープと蛍という二つの風景によって作品が構成された。

 本展では、アーカイバルピグメントプリント約32点が展示予定だ。