マシュー・ブラント「little puddles（小さな水たまりたち）」

　Gallery Commonで、アメリカ人アーティストのマシュー・ブラントの日本で初めての個展「little puddles（小さな水たまりたち）」が開催されている。

　ブラントは1982年ロサンゼルス生まれ。予想だにしない素材や技法を取り入れた実験的な写真作品を提示し、写真とは「光沢紙に整然とイメージが印刷されたものである」という固定観念を覆し、時間的な瞬間をとらえるものであるという写真の限界に挑んでいる。

　本展では、複数のシリーズの作品を通じてブラントの「流動的」な活動を映し出す。インクの染み、貯水池の水、溶融ガラス、銀液などの液体によって制作された本展の展示作品は物理的な意味でも「流動的」であり、また人々の住む世界を「大きな水域」に喩えると、そこから現れた「水たまり」としての作品は概念的な意味でも「流動的」だ。

　ブラントにとって作品をつくることは、自身の内側を巡る旅であると同時に、その外の世界を理解するための手段でもある。また、写真の本質に実験性を見出しているブラントの作品は、テクノロジーに何ができるかを示しているともいえる。テクノロジーは私たちの知覚を反映しているものであり、ブラントは新たな技法に挑むことで私たちの新たな知覚様式にも挑んでいる。

　本展覧会では、複数のシリーズから作品を紹介。