EXHIBITIONS

渡辺志桜里個展「BLUE」

SACS
2024.02.23 - 03.10
 渋谷広域圏においてにぎわいをつくることをめざし取り組みが始まった「まちづくり協定」の一環として、CCCアートラボが企画する≪Might Be Classics≫プロジェクト。その第3弾として、現代美術家・渡辺志桜里の個展「BLUE」を開催する。

 渡辺は1984年生まれ。2017年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。全体性を主軸に、個々が集合した現象と、その個に携わる身体の境界といったものに焦点を当てて制作。主な展覧会に、MEET YOUR ART FESTIVAL 2023「Time to Change」(山峰潤也キュレーション,2023)「とうとうたらりたらりらたらりあがりららりとう」展(企画/キュレーション,2022)、「水の波紋展」(ワタリウム美術館主催,2021)、「ベベ」(WhiteHouse, 2021)、「Dyadic Stem」(The 5th Floor, 2020) などがある。

 渡辺は3月10日まで開催中の「百年後芸術祭 -いちかわ芸術祭」で、「種の保存法」に着目したインスタレーション作品《RED》を発表。《RED》は、「種の保存法」制定にあたって議論された中心的な生物をモチーフに、国家によって形作られた生態系がどのような未来をたどりうるのかを探る作品だ。少子化が問題視されるなか、日本国民にとって「種の保存法」が内包しているナショナリズムとは何か、という観点において出産や生殖といった個人の身体に関わる問題を再考するものとなっている。

 本展では、この作品の対になる展示として《BLUE》を発表。《BLUE》では、1960年に日本に持ち込まれた特定外来魚・ブルーギルをモチーフに、人間の多様性の成立過程について考察する。

「ブルーギルは『特定外来生物による生態系などに係る被害の防止に関する法律』により、”飼育・栽培、保管、運搬、販売・譲渡、輸入、野外に放つ事”が規制され、釣り場でも外来魚ボックスに棄てるなど、処理が勧められる魚である。ナショナル・ジオグラフィック(2022年1月12日)によれば、歴史を遡るとこの魚は、1960年にシカゴ市長から現上皇・明仁氏に送られ、戦後の爆発的な人口増加を支えるタンパク源として期待された”プリンスフィッシュ”だったという。 いつしか忘れられ、人知れず繁栄した日本のブルーギルであるが、DNA解析によれば、送られた17匹のうち15匹が始祖となる事が明らかになっている。一方で世界的に生物多様性の減少ということが問題視され、”レッドリスト”正式名称”The IUCN Red List of Threatened Species”と呼ばれるリストが国際自然保護連合によって作成され、絶滅危惧種の保護が進められている。
ここで問題になるのは自然保護といった時にドメスティックな種の選択が迫られるという事である。在来種、あるいは外来種といったものが移り行く環境の中でいかに曖昧な定義であるか、選択されるものとされないもの……、環境保護と国家の関係を『種』という視点から考察する本展は、少子化対策が国策として勧められる一方で、難民問題や種族間の争いなど、人間の多様性はいかにして成立するのか。異種を通して生物全体の種の絶滅と保護と排除の抱き合わせの関係を考察したいと思う」(アーティストステートメント)