遠藤文香 個展 「Swaying Flowers」

　LAG (Live Art Gallery)で遠藤文香（ayakaendo）の個展「Swaying Flowers」が開催されている。

　遠藤は1994年生まれ、東京を拠点に活動。2021年東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻を修了し、21年「写真新世紀2021」佳作入賞（オノデラユキ選）、22年にNADiff Galleryにて個展「The belief in Spritual Beings」開催、23年にはTaka Ishii Gallery前橋でのグループ展に参加するなど、着実にキャリアを重ねている。その活動はアート業界のみならずファッションの世界でも評価され、今後も幅広い活躍が期待される若手アーティストのひとりだ。

　本展で展示される作品《Swaying Flowers》は、遠藤が東京藝術大学在学中に制作された作品をリメイクしたもの。様々なカメラを用いて花々を撮影した遠藤は、それらの写真を布に転写、そして布の周縁を切り刻むことで、一つひとつ作品をつくり上げる。遠藤の写す花々の写真は、ブレ、ボケ、色褪せや白飛びがあり、また時にフレーミングすら中途半端な印象を鑑賞者に与える。これは、花そのものを被写体としてとらえるよりは、カメラやストロボを通して花に介入し、実体とイメージとの境界線を曖昧にして揺さぶりを起こす遠藤の特徴を表す。

　さらに本作は支持体として採用した布に写真を転写、加えてそれらを自らの手で切り裂くという身体的な介入を行い、本来二次元であるはずの花のイメージに新たなる質感を付与させた。儀式的ともいえるそれら一連の過程を経て生まれた作品は、「花の写真」という従来の表現枠では収まらず、別の何かへの変容を感じさせる。本作はのちにアニミズム的な自然観や神聖性をテーマに作品を制作することになる遠藤の原点と言える。