EXHIBITIONS

THE 新版画

版元・渡邊庄三郎の挑戦

2022.09.10 - 10.10, 2022.10.12 - 11.06

チャールズ・W・バートレット ホノルル浪乗競争 1919(大正8) 渡邊木版美術画舗蔵

川瀬巴水 東京十二題 こま形河岸 1919(大正8) 渡邊木版美術画舗蔵

フリッツ・カペラリ 黒猫を抱く女  1915(大正4) 渡邊木版美術画舗蔵

山村豊成(耕花) 梨園の華 十三代目守田勘彌のジャン・バルジャン  1921(大正10) 渡邊木版美術画舗蔵

川瀬巴水 清洲橋 1931(昭和6) 渡邊木版美術画舗蔵

川瀬巴水 東海道風景選集 馬入川 1931(昭和6) 渡邊木版美術画舗蔵

小原祥邨 山葡萄に四十雀 昭和初期 渡邊木版美術画舗蔵

平野白峰 対鏡(鏡の前) 1932(昭和7) 渡邊木版美術画舗蔵

 昭和期に木版画の復興と新たな木版画制作に挑んだ版元、渡邊庄三郎(1885〜1962)の軌跡を紹介する展覧会「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」が、茅ヶ崎市美術館で開催される。

 江戸時代に確立された「浮世絵木版画(錦絵)」は、明治以降の西洋の写真や印刷技術導入の影響で、衰退の一途をたどることとなった。そのなかで、あえて伝統的な絵師、彫師、摺師による分業体制の浮世絵木版画技術を使い、高い芸術性を意識した同時代の画家による取り組みが、「新版画」の始まりとされている。これを牽引したのが渡邊版画店(現在の渡邊木版美術画舗)の渡邊庄三郎(1885〜1962)だった。

 庄三郎は17歳で浮世絵商・小林文七の輸出の出店(横浜店)に勤め、そこで出会った浮世絵の、とりわけバレンで摺る木版画特有の美しさに魅了され、木版画の復興と新しい木版画制作を志した。

 その後、独立した庄三郎は、1909(明治42)年に東京・京橋に渡邊版画店を構え、浮世絵研究と販売を行う傍ら、1915(大正4)年から、来日した外国人画家の作品の版画化を試み、鏑木清方(1878〜1972)の門下生を中心とした新進気鋭の画家たちを絵師に起用。絵師、彫師、摺師の協業のもと、高品質な材料を用い、それまでにない複雑かつ華麗な彩色に「ざら摺り」など手摺りならではの技法を駆使するなど、庄三郎の創意工夫と優れた審美眼に支えられた新たな「浮世絵木版画」を世に送り、昭和初期に国内外で巻き起こる「新版画ブーム」の火付け役となった。

 渡邊版画店の「新版画」の精神をいまもなお受け継ぐ渡邊木版美術画舗の全面的な協力のもと、開催される本展。残存数が少ない貴重な初摺の渡邊版を通して、庄三郎の挑戦の軌跡をたどりながら、モダンな精神に彩られた瑞々しい表現の魅力を紹介する。