EXHIBITIONS

林良文「反エントロピー」

2022.07.16 - 08.06

林良文 健診/UNE VISITE MEDICALE 2021 © Yoshifumi Hayashi

林良文 シンメトリーの女/LES FEMMES AVEC SYMETRIE 2021 © Yoshifumi Hayashi

林良文 生物2/UN ETRE VIVANT 2 2021 © Yoshifumi Hayashi

林良文 バラ色の花/FLEUR ROSE  2021 © Yoshifumi Hayashi

 作家・林良文の個展「反エントロピー」が成山画廊で開催されている。8月6日まで。

 林は1948年福岡県生まれ。72年に中央大学哲学科を中退後、74年に単身で渡仏。以来、パリを拠点としてきた。76年に独学で鉛筆デッサンを始め、78年にパリのジャック・カザノヴァ・ギャラリーで初個展を開催。「エロティック」をテーマに油彩画やドローイング作品を制作している。

 本展は、「変化の二乗」(2019)、「THALES」(2020)に続く、成山画廊では3度目となる個展。新作の油彩画7点と新作ドローイング3点を発表する。

 展覧会のタイトルに冠した「反エントロピー」について、作家は以下のように述べている。

「『エントロピー』とは物理学用語で、熱力学の第二法則から作り(?)出されたもので、自然は放っておくと乱雑な運動を呈するという現象だ。例えば街中の公園は放っておくと紙屑やペットボトル等が散在して乱雑な状態になるようなものだ。そしてこの乱雑さを解消して秩序ある状態に回復させる為には掃除をしなくてはならない。この掃除という作用を加えることを自由エネルギーを作用させると説明する。ある物理学者はこのエネルギーと自由エネルギーの相関関係を微積分の数式で表した。

 私はこの数式は分からないし、また全然信用してもいない。というのはこの宇宙の自然界にはそもそも乱雑な運動などは有り得ないからだ。単的に説明しよう。我々の地球は数十億年にもわたって太陽の回りを絶妙に定まった軌道をたどって回転し続けている。いや地球の軌道だけではない。太陽系を想い描いてみよう。

 何という『秩序の体系』なのだろう!自然は乱雑になろうとしているのではなく、秩序を保とうとしているのだ。だからエントロピーなどという思い付き自体、人間のエントロピー的作り話なのだ。しかしエントロピーは実在する。人間は原爆やヘロインを作り出し、また次々と戦争の止む事が無い。原爆やヘロインや戦争は正にエントロピーの結晶であり、それを作るのは自然ではなく『人間』なのだ。人間こそ恐るべきエントロピーの塊なのだ。私の絵画製作は『美』への表現では無い。私の絵画製作は自己の内部に巣食うエントロピーを掃除して『秩序』を『再構築』することにある(林良文)」。