EXHIBITIONS

ライアン・ガンダー「Killing Time」

2022.07.09 - 08.06

ライアン・ガンダー Just be 2022
Photo by Ryan Gander Studio
©︎ Ryan Gander Courtesy of the artist and TARO NASU

 TARO NASUでは、ライアン・ガンダーの個展「Killing Time」が開催されている。

 1976年生まれ、イギリス・チェスター出身のライアン・ガンダーは、現在ロンドン、サフォークにて活動。美術作品や自身が生活で遭遇する物事を素材に制作を行っている。

 TARO NASUでの個展は、2018年の「Moonlighting」展以来4年ぶり。ガンダーは本展の開催に際して、次のテキストを書いている。

「わたしが若い頃、困難な状況に直面したときに父がかけてくれた言葉は『世界にひと回りさせておけ』というものだった。年を重ね、それが『いったん休め』という意味だったのだと気づいた。決断するのではなく、24時間、地球が一回転するあいだ待つ。そうすれば見方が変わり、他者をおもんぱかる余地ができる。また父は『時間は最大の財産だ』とも、わたしにたびたび言い聞かせた。つまり、時間を最大限有効に使い、その価値を認識してむだにはするな、そうすることで『行動』を起こし、自らの主体性を活かすことができるのだと伝えたかったのではないか。主体性とは、だれもがしきりに権利を主張するのに、たいていの人は浪費してしまうものだ。これらふたつの父の言葉は、もちろん、やや矛盾している。硬貨の両面のように。

価値の定義について考えるとき、以前ならお金のことが頭に浮かんだ。加速する資本主義の現実のなかでわれわれは皆暮らしており、逃れようがない。しかし、問題を理性的に考えてみれば、時間や、心をそそぐことのほうが当然、はるかに価値がある。お金は、われわれ自身の主体性や、変化のきっかけが延々とつづいて成りたつ人生に先んじては存在していない。これまで出会った数多くの人が、硬貨に対して、理屈を超えたプラスアルファの価値を見いだしていた。ねじ回しの代用、センチメンタルな思い出の品、記憶のよすが、縁起かつぎの記念品、珍しいコレクターアイテム、ものごとを決めるために表が出るか裏が出るか……または『行動』か『いったん休め』かと投げる道具。(ライアン・ガンダー)」

 なお本展と同時期に、東京オペラシティ アートギャラリーで展覧会「ライアン・ガンダー われらの時代のサイン」(7月16日~9月19日)が開催される。