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村上友晴

Tomoharu Murakami

 村上友晴は1938年福島県生まれ。幼少期から長谷川等伯などの日本古美術に親しむ。61年東京藝術大学日本画科卒業。同年に専攻科に入学するが3ヶ月で中退し、当初は「村上友康」の雅号で日本画家として活動を開始。美松書房画廊での初個展で日本画顔料を使用した黒の絵画を発表する。26歳のとき、招待出品したグッゲンハイム国際賞展(1964)で見たアメリカ抽象表現主義の作品に感銘を受け、大きなキャンバスに黒の下地を塗り、ペインティングナイフで木炭粉を混ぜた絵具を重ね置いて、重厚な画面をつくり上げる独自の手法を生み出す。75年に雅号を捨て、約10年の空白期を経て「村上友晴」の名で現代作家として再出発。90年代には、白い紙の表面に鉛筆やニードルの痕跡を残した繊細な作品で新境地を見せる。

 79年、北海道のトラピスト修道院を訪れたことをきっかけにカトリック教会の信徒となった村上。修道院の生活に倣いながら、一つひとつの作品を丹念に制作し、神に祈りを捧げる静謐な絵画は深い精神性を湛えている。近年の個展に「村上友晴展 ― ひかり、降りそそぐ」(目黒区美術館、2018)、「村上友晴」(ART OFFICE OZASA、京都、2018)。これまでの主な展覧会に、「グッゲンハイム国際賞展」(グッゲンハイム美術館、ニューヨーク、1964)、「村上友晴・庄司達」(ロサンゼルス現代美術研究所、1981)、「第16回サンパウロ・ビエンナーレ」(1981)、「静けさのなかから:桑山忠明/村上友晴」(名古屋市美術館、2010)などがある。