ARTISTS

篠原猛史

Takeshi Shinohara

 篠原猛史は1951年京都府生まれ。73年大阪芸術大学芸術学部芸術科卒業、78年プラッツ・インスティトュート卒業。風、火、水、音などの自然界に見られる様々な要素によって特徴づけられる篠原の作品群は、作者の思いを鑑賞者に対して一方的に提示するものではなく、特別な仕掛けを用いるわけでもなく、鑑賞者が作品と向き合うことで明らかになる。

 作品という現象のなかに興味深く入り込み、アーティストと共感(エンパシー)を得ることで、我々は却って「見る」という行為を純粋に楽しみ、感覚を解きほぐしながら環境のなかに新しい発見や体験をする機会を得ることができる。篠原の印象的な言葉に、「原始的秩序とその循環を誘発し、増幅され、昇華される」というものがある。自然の原理に厳密に運命づけられた、この世界の秩序。裏腹に、無秩序を表象する人類社会に於いて、人々が生きる様々なストーリーは、時代ごとに統計的解釈をもってヒントを我々に与え、しかし無秩序と可逆性の理解が増大している。このまま無秩序が増大し、生命の秩序ある発展、歴史や情報の伝達はどうなるのだろうか。篠原の作品はヒントとなる。

 篠原はまた、東京大学においても授業、ワークショップ形式の講座を開いている。触発と創造のための芸術ワークショップと題したもので、この講座は学生だけでなく社会人も参加できる。