安藤忠雄は1941年大阪府生まれ。69年より「都市ゲリラ」として建築設計活動を始めて以来、日本のみならず、世界各国で意欲的に活動を展開してきた。79年には「住吉の長屋」で日本建築学会賞を受賞。95年には“建築界のノーベル賞”とも言われるプリツカー賞を受賞し、そのプロジェクトは直島ベネッセハウス(1992、香川)をはじめ、ユネスコ瞑想空間(1995、パリ)やピューリッツァー美術館(2001、セントルイス)、表参道ヒルズ(2006、東京)など世界各地におよび、今なお進行中のプロジェクトも多い。
大病を克服し、さらに精力的な活動を続けている安藤。その挑戦の歴史と、今後の展望を一同に紹介するのが、9月27日より国立新美術館で開催される展覧会「安藤忠雄展ー挑戦ー」だ。
本展は現在の安藤のアトリエを一部原寸大で紹介する「プロローグ」から展覧会は始まる。続く「原点/住まい」では、安藤が建築の「原点」としている住宅建築にフォーカス。「住吉の長屋」をはじめとした24のプロジェクトが長い空間に並ぶ。
「光」では、安藤がこれまで手がけてきた教会建築を紹介。なかでも、大阪府茨木市にある「光の教会」(1989)は本展最大の見どころだ。今回の展覧会では、「建築はなによりも体験してほしい」という安藤の思いから、「光の教会」を美術館の野外展示場に原寸大で再現。
プレキャストのコンクリートパネルと鉄骨で構築された教会は、実際の教会とは異なり、十字架のスリット部分にガラスが入っておらず、光がダイレクトに教会内部に射し込む様子を楽しむことができる。安藤が「つくりたい」と思っていた、理想形にもっとも近い「光の教会」を東京で堪能できる貴重な機会だ。
続くセクション「余白の空間」では、大阪市の「中之島プロジェクト」(計画案)や、「表参道ヒルズ」(東京)、「ピューリッツァー美術館」(アメリカ)、「上海保利大劇院」(上海)などの都市建築が展覧。安藤が一貫して試みてきた、人が集まる場を創出するための「余白」を考える。
また、「場所を読む」セクションでは、ひとつの島に7件の建築をつくった「直島の一連のプロジェクト」をインスタレーションとして展示。3面スクリーンの映像とともに、環境一体型建築の系譜をたどることができる。
安藤が得意とするのは新築ばかりではない。これまで手がけてきた数多くの古い建築の保存と再生に関わるプロジェクトを紹介する「あるものを生かしてないものをつくる」では、歴史的建造物「海の税関」を現代美術館にした「プンタ・デラ・ドガーナ」(イタリア)の巨大模型をはじめ、パリ中心部の穀物取引所を現代美術館に改造する「ブルス・ドゥ・コメルス」(進行中)など、実業家でアートコレクターのフランソワ・ピノーとともにタッグを組んだ美術館建築を見ることもできる。
本展は、会場デザインも安藤本人によるもので、まさにその挑戦の歴史を模型、図面、映像など豊富な資料で通覧できる格好の場となっている。