東山魁夷(1908〜99)は横浜生まれの日本画家。1933年に東京美術学校(現・東京藝術大学)研究科を修了後、ドイツに留学。のちに東山は、太平洋戦争への応召や相次ぐ親族の死など、数多くの試練に見舞われるも、苦難のなかで風景の美しさを見出し、自然と向き合い続けた。その日本人の自然観や心情を写し取る画風は高く評価され、いまもなお、戦後を代表する国民的な日本画家として知られている。
京都では30年ぶり、東京では10年ぶりの開催となる回顧展「生誕110年 東山魁夷展」は、代表作である《残照》《道》《緑響く》のほか、ヨーロッパや京都の古都の面影を描いた風景画などの本画約70点と習作が展示される。
加えて、構想から完成まで10年を要した、東山芸術の集大成といわれる奈良・唐招提寺御影堂の障壁画(襖絵と床の壁面全68面)も再現。本作は、御影堂の修理にともない、今後数年間は現地でも見ることができないため、御影堂内部を間近で見ることができる貴重な機会となる。約80点の名作を通じて、東山芸術の全貌に迫ることができるだろう。