日本を代表する美術大学のひとつである多摩美術大学。同大の大学院彫刻専攻に在籍する学生有志が、2月22日付で彫刻科と大学に対し要望書を提出、オンラインでその書類を公開した。
要望書では「現在の教授全員で全員の学生を見るというシステムの見直し」「技術と制作理論を分ける考え方のもとに、バランスのとれた人事の決定」の2点を明記。
前者においては「教授全員で全員の学生を見るという制度は、機能していないどころか、アカデミックハラスメントを起こす温床となっており、私たちはこの仕組みを変える必要があると考えています」と主張。また、後者については教員の質の確保と、ジェンダーバランスの改善を要求している。
上述のハラスメント問題について、学生有志側は美術手帖の取材に応え「アカデミックハラスメントの他に、パワーハラスメント、ジェンダーハラスメント、モラルハラスメントなどに該当するものです」と説明。これまでは匿名での報告であったため、ハラスメント防止委員会への訴えやハラスメントの加害者へのヒアリングは行われなかったという。
今回の要望書公開をめぐっては、ウェブサイトで過去の経緯も明らかにされている。サイトによると、2017年3月に当時の学部2〜4年生と大学院生有志が複数のハラスメント報告を添えた匿名の要望書を提出。同年7月には要望書への回答書が提示されたが、ハラスメントに対する具体的な解決策などが示されていなかったとしている。
学生たちが実名公表というリスクを背負い、大学への要望をつまびらかにした今回のケース。大学側がどのような対応を示すのかが注目される。
なお、要望書の全文は次のサイトから読むことができる。(https://sites.google.com/view/student-choukoku/home)